第8話 遭難者発見

丸太の橋は狭かったけれど、学校の平均台よりは広いので、下を見なければ大丈夫だ


一応、命綱代わりにロープでエミリを繋ぐと、ゆっくりと渡った


「折れない……よね?」


「大丈夫だよ。ほら、ロープを持っていてあげるから」


エミリはこわごわと渡った


谷を渡って崖を降りると、僕が最初に居た砂浜とは反対側の砂浜のようだ


ちなみに、砂浜は途中で崖になっていたので、ここへは直接繋がってはいないのだろう


砂浜に、漂着物が何か無いか調べることにした


「めぼしいものはないみたいね」


「でも、流れ着いてるってことは、もしかしたら……」


そういいながら、岩の後ろを見ると、人のようなものが見えた


「エミリ、ちょっと待ってて、何かある」


「え?どこ?」


「待って。もし、水死体だったらエミリのトラウマになるだろうから、僕が確認してくる」


「うっ、わかった。気を付けてね」


エミリは出来るだけ岩の向こうを見ないようにしながら、手を振った


人のようなものを確認すると、僕より体格のいい男性だった


首に触れると、体温が下がっているようだけど、脈がある。僕一人では引き上げられないので、エミリを呼ぶ


「エミリ、生きている人だ!引き上げるのを手伝って」


「わかった、すぐ行く!」


エミリにロープを持たせ、僕が海水に浸かって下から押し上げる。エミリは少しずつ引っ張っていくと、何とか岩の上に助け出せた


エミリは足を、僕が肩を持って砂浜に連れて行く


「ポーチがある。場合が場合だから、何かないか見せてもらおう」


僕はポーチの中を見ると、ライターがあった


「ライターがあった!よし、焚火をしてこの人を温めてあげよう。エミリ、何か燃えそうなものが無いか探そう!」


「うん、わかった!私はこっちを探すね」


手分けして燃えるものを集め、火を起こした。男性の救命胴衣を脱がせ、火のそばに横たえる


しばらくして、血色がよくなってきた


「うぅ。ここは……?」


男性は目を覚ますと、僕たちの方を見た


「ここは恐らく無人島です。人が住んでいた形跡はありますが、大分昔のものでした。僕たちはここで助けが来るのを待っています」


「そうか、君たちが助けてくれたのか。ありがとう」


男性は、少し回復したのか、起き上がった


「俺の名前は佐々木基也(ささき もとや)だ。年齢は15歳、クルーズ船が沈没した後、救命ボートに乗ったんだが、パニックを起こした人に突き落とされてしまってね。1日中海の上を浮かんでいたら、意識が無くなったようだ」


「熱中症かもしれないですね、水分は要りますか?」


「ああ、海水も飲んで喉がカラカラだ。あと、こんな状況だし、タメ口でもいいよ」


「わかりました。けど、もともとこんな感じなので。さあ、水をどうぞ」


基也に水を渡すと、ゴクゴクと飲んだ。まだ欲しそうだったので、もう一杯入れてあげた


「本当に助かったよ。君たちが居なかったら死んでいたかもしれない」


「いえ、これからは助け合って生き残りましょう!」


僕とエミリも自己紹介をした。基也にしばらく休んでもらって、僕達は砂浜を探索した


「エミリ、ここにも洞窟がある。見てみよう」


洞窟に入ると、少し湿り気がある感じだ。もしかしたら、満潮になると水没するかもしれない。しかし、取り残された海水に、魚がいるのが見えたので、食事には困らなさそうだ


「じゃあ、モトヤを呼んでくるね!」


「ああ、頼むよ」


エミリが去った後、僕は洞窟内を探検した。奥の方に行くと、2階のようになっていて、コケを見たところ、そこは水没しないようだ。居住はできそだけど、残念ながら近くに水場が無い


しばらくして、エミリがモトヤを連れて戻ってきた


「エミリ、ここを拠点にしようか。あっちの洞窟から食器や道具、水を持ってこよう」


「えぇ、またあの橋を渡るの?」


「嫌ならここで待っているかい?」


「うーっ、行くわよ、行けばいいんでしょ!」


エミリは、さすがに知らない男性と2人きりになりたくは無いようだった


モトヤにここで休むように言って、僕たちはもう一つの洞窟から道具を運んだ


暗くなる前に、ベッドになりそうな草を集めた。また、運よくこちらにもヤシの実が落ちていた。夜飯は洞窟内で獲った魚と、ヤシの実ジュースだ。ライターがあるから、火をつけるのはずいぶん楽になった。文明の利器ってすばらしいね!





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る