第7話 ウサギの解体

僕は海に行くと、血抜きを始める


まず、暴れるウサギの頸と尻尾を切って木にぶら下げる


しばらくして、血が出なくなってきたら木から下し、石の上に置く


ウサギの両方の後脚の足首の周囲の皮に切り込みを入れ、皮をはぐ


皮をはいだ後は、腹に切り込みを入れて内臓を取り除く


あとは、関節のところで骨を切り離し、肋骨などの細かな骨も取り除いていく


最後に余分な脂を取り除くと、細かい肉にして原型を残さないようにした


「これで見た目は鶏肉と変わりないな」


僕は軽く海水で肉を洗って血を流すと、葉っぱに包んで持ち帰った


洞窟にはすでにエミリが帰ってきていた


「見て!ヤシの実が2つもあったの!あと、食べられるかどうか分からないけど、キノコも採ってきたよ!魚を獲るのは無理だったけど」


「上出来だよ、こっちもほら、ウサギの肉だ」


僕は葉っぱからウサギの肉を取り出す


「へぇ、こうしてみるとお店で売ってる鳥の胸肉みたい」


「まあ、似たようなものだよ、ウサギは一羽って数えるし。さあ、木に刺して焼こうか」


木の枝にウサギの肉を刺して焚火の側に立てていく。焼いている間に、エミリが採ってきたキノコの選別をしようか。うん、色のあざやかなやつは、ほとんど食べられないやつだ。食べられるのは、ヒラタケ、シメジ、シイタケかな?


ウサギの肉とヤシの実のジュース、それから塩を振ったキノコを食べると、意外にお腹がいっぱいになった


「ふう、結構食べたわね」


「やっぱり、肉があると力が出そうだ」


僕たちは少し幸せを感じて笑いあった。人間、やっぱり空腹だと悲観的になるからな


「さて、森の方を探索してみようか」


「じゃあ、片付けるわね」


食器を水洗いしてから片づけと、焚火の火を消して森に向かう


川を越え、崖を登り、草原を進んで森に入ると、横から急にサルが飛び出してきた


「昨日のお風呂を覗いたお猿さんかしら?」


「キキッ」


「あなたはこの森について詳しいかしら?」


「キッ」


不思議な光景だった。まるで、エミリとサルが会話しているようだ


「あっ、ごめんなさい。言ってなかったけど、私、なんとなく動物の言葉が分かるの」


それならさっきの行動にも納得だ


「それは、すごいね! サルはなんて言っているの?」


「この森に、抜け道があるみたい」


見た感じ、森の周りは、もう一段階の崖で囲まれている。疑っているわけではないが、もしサルの話が本当なら、大収穫な情報だ


エミリが「バイバイ」と言うと、サルは持っていたバナナをくれた。エミリの風呂を覗いたお詫びかな?オスとは限らないけど。あと、この森にはバナナの木もある事が分かったので、この探索を終えたら探してみよう


「まさか、情報の他にデザートまでもらえるなんて」


「そうね、ラッキーだったわね」


僕とエミリが笑いあっていると、猿が言っていた抜け道に着いた


「僕たちがギリギリ通れるくらいの穴が開いているね」


抜け道は、猿が利用しているらしく、きちんと向こう側に通じていた。窮屈な穴を抜けると、そこは深い谷だった。そこには、ボロボロの橋が架かっている


「ここは、昔あった道が崖崩れで埋まったようだね」


「そうね、橋もボロボロで渡れそうにないわ。お猿さんみたいにロープを伝って渡るわけにもいかないし」


サルならボロボロのロープを伝って渡れそうだけど、僕たちの腕力では厳しそうだ。崖は5mほどだけど、ジャンプして渡るのも無理そうだ


「よし、橋を架けよう」


「え?そんなことできるの?」


僕はリュックから、洞窟内にあったロープを取り出す


「森から、渡れるような木を持ってこよう」


もう一度抜け道を通って森へ行き、エミリと一緒に倒木を探した。丁度崖を超えられるくらいの長さの真っすぐな木が2本見つかったので、抜け道に押し込んで持っていく


「よし、これをロープでつなぎ合わせて、滑り止めになるように、木の表面を石で叩いて逆立てよう」


エミリと一緒に木を立てて、向こう側に渡すように倒す。幅20cmくらいの木の橋をが架かった。渡っている時にずれないように、少しだけ地面を掘って凹ませると、そこにハマるように丸太を置いた


「これでよしと」


「本当にマサキは何でもできるのね」


橋を架け終わったので、一旦休憩する事にして水筒から水を飲んだ


「エミリも飲むかい?」


「ええ、ありがとう」


エミリに水筒を渡すと、「また間接キスだ」と小声が聞こえたけど、これも聞こえなかったことにした








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