第2話 拠点作成

エミリと僕は、2人できょろきょろと探しながら砂浜を歩いていると、川が見えてきた。川の水はとても綺麗で、飲み水にできそうだ


「これで、飲み水にも困らなさそうだね」


「よかったわ!私、海水でべとべとしてて、洗い流したかったもの」


エミリにとっては、飲み水よりもシャワーが欲しかったようだ。しかし、ここで時間を使うわけには行かない。それに、歩いて汗をかいたら、せっかく洗い流した意味も無くなってしまう


「洗い流すのは夜過ごす場所を見つけてからだね、それまで我慢して」


「はーい、早くいい場所が見つからないかなぁ」


エミリは手を頭の後ろで組むと、その辺の石ころを蹴った


しばらく川に沿って、川上に向かって歩くと、洞窟が見えた


「僕たちは運がいいようだ、さっそく中を見てみよう」


「……そんなに奥までは無いのね」


10mくらいで行き止まりになっていたが、雨風は防げるので、何もない砂浜で寝るより何倍もマシだ


「じゃあ、水浴びしてくるね。マサキ、絶対に覗かないでよ!」


「わかってるよ、僕はここで色々準備してるから行っておいで」


「……タオルってある?」


「あるけど、海水でグショグショだから、一回は洗わないとね」


「じゃあ、絞って拭くのに使うから、貸してもらっていい?」


「いいよ。じゃあ、行ってらっしゃい」


エミリは、「ありがと」と小さく言うと、川の方へ行った


僕は、少しでも濡れた服を乾かせるように、火が起こせる物がないか、周辺を見て回る


ここ数日は雨が降っていないのか、丁度使えそうな乾いた枝が落ちていた


後は、燃えやすそうな枯れ草と、糸かロープか、せめて蔓があればいいな


僕はエミリと鉢合わせしないように、川と反対側に向かい、丁度良く蔓と燃えやすそうな枯れ草を見つけた。ついでに、はがれそうな木の皮もあった


「よし、これを組み立てて……」


木の枝を組み合わせて蔓を巻き付け、枯草を火種になるようにして、木の皮と木の枝をこすり合わせた


少し煙が出てきたあたりで、息を吹き込むと、火種が出来た


「あとは、消えないように枝をくべていくだけだな」


僕は小さな火種に枯草で少し大きな火にすると、小さな枝を折ってくべていく。そうしているうちに、エミリが水浴びが終わったのか、戻ってきた。エミリは入り口で立ち止まり、目を見開いた


「マサキすごい!火を起こせるのね!」


「まあ、親がそういうの好きだったから覚えていたんだよ。それで服を乾かすといいよ」


「でも、代わりの服が無いから……」


「じゃあ、乾くまで洞窟の外で待ってるから、乾いたら呼んで」


「わかった!あっ、タオルありがとう。使う?」


「タオルは一つしかないからね。使わせてもらうよ」


僕はエミリからタオルを受け取ると、洞窟を出る


「あっ、火は消えないように時々は枝を入れてね!」


僕は洞窟の外から、エミリに忠告をした


「わかった!」


エミリは、元気よく返事をしたので多分大丈夫だろう。仮に消えたら、エミリが服を乾かせなくなるだけだ


僕は川で裸になり、服と自分の体の塩を落とす


ぎゅっぎゅに絞った服は、乾かさなくても何とか着れそうだ


そろそろ大丈夫だろうかと、枝を探しながらエミリの服が乾くのを待っていた僕は、洞窟の中に声をかけた


「エミリ、そろそろ服は乾いた?」


「ちょっとまって!うん、乾いたみたい。すぐに着るからもう少し待ってて!」


僕は少し長い枝を折りながら暇をつぶす。2分ほどで「いいよ!」と声がかけられた


「あとね、マサキに見てもらいたいものがあるの」


「なんだい?」


僕はさっき折っていた枝を、くべやすいように火の近くに下すと、エミリに尋ねた


「何を見つけたの?」


「火に枝をくべてるときに気づいたんだけど、ほらここ、扉になってる」


「本当だ、開けてみよう」


洞窟の壁とほとんど同じような色だったので、少し見ただけでは分からなかったみたいだ。黒茶色の扉を開けると、しばらく使っていなかったようで、埃が舞う。焚火から枝を一本引き抜くと、ろうそく代わりに部屋の中を照らす


「錆びた斧、薪にロープもある。誰か住んでいたのかな?」


ちょっとした山小屋並みの設備が整っている。これなら、助けが来るまでの数日間ならなんとかなりそうだ


「お手柄だね、エミリ」


「うん!えへへ」


エミリはうれしそうにほほ笑んだ



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