第20話 体育祭の準備⑤

 休憩を終え、再び草むしりに取り掛かる。

 雪が一旦クラスの方に向かい、呼びかけた結果クラスメイトのほとんどが来てくれた。本当に俺のせいで……面目ない。

 そんなことを思いながら、草をむしっていると、豊が近づいてきた。

「なぁ、女子たちの体操服見たか?」

「あ? 無駄話はしないぞ? さっさと手を動かせ」

「まぁまぁいいから聞けって。春樹にとっても絶対にいいことだからさ」

「んだよ……」

 と、言いつつ草をむしりながら耳を傾ける。

 豊はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら声をひそめつつ、

「女子の体操服が汗でびしょびしょだろ? 特に上をよく見てみろよ。ブラが透けてるんだぜ……クックク」

「どこの悪党の笑い方だよ……。そのことなら知ってるし、それがどうしたんだよ」

「え?! 知ってたの!?」

 豊は大袈裟に驚く。

「いや、言われなくても見ればわかるだろ……」

「さすがエロ魔神だな……」

「誰がだよ」

 あまりにも心外な言われようだ。

 俺だって見たくて見ているわけじゃない。でも……目線が勝手にその方向に移動してしまうことは否定しない。

 特にクラス一巨乳と言われている氷川さんなんて……ああ。あれはもう牛っスね。絞ったら出てくるんじゃね?

 そんなことを考えていたら背後から草を投げ込まれた。

 誰だよ……と思い、後ろを振り返る。

 雪がジト目をしながら俺をずっと見ていた。

 ――え? なんで? もしかして俺の考えていることがわかるの?!

 もしかしてエスパーなの? そんな能力使えちゃうの?

 冬井雪……ちょっと恐ろしい人物かもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る