第20話 体育祭の準備③
体育祭の練習が始まって三日目が経過した水曜日。
本番まで残り四日となった今日は朝から校内の掃除に追われていた。
一限目の朝九時から六限目までの午後三時半までずっと掃除とか……ちょっと終わる頃には精神がどうにかなっていそうな予感もするが、大抵掃除だからと言って真面目にする輩なんてそうそういない。大体のやつらは先生も含め適当だ。ある程度綺麗になっていればいい。そんな感じだろう。
各クラスごとに掃除する場所が決められている中で俺たちのクラスは外の草むしりに決まった。
こんな暑い中での草むしり……しかも六限目までずっとだし、校内全ての雑草をむしり取らなければならない。地獄だ。なんで草むしりなんて……と、嘆きたいところではあるが、こうなってしまったのも全て俺のせい。昨日の放課後、委員会の会議にて、副委員長同士でジャンケンが行われた。ジャンケンで勝った人から順に好きな掃除場所を選ぶことができるのだが、俺の場合全て敗北。俺ってこんなにジャンケン弱かったけ? そう思いたくもなるくらい負け続けてしまった。その結果、最後に残った校内の草むしり。
――ああ。クラスメイトからの恨みの視線が鋭いナイフのようにグサグサ刺さるよぉ……。
もう僕ちゃん泣きたいっ!
現実逃避をするべく、理想の女子を頭の中で浮かべておこう。
ここでどうでもいい話ではあるが、一応聞いて欲しいことがある。俺の好きなタイプはショートカットで物静かだけど明るい性格の子。
本当にどうでもいい話ではあるし、俺の好きなタイプを話したところで誰得なんだよと思われるかもしれないが、まぁそこは穏便に見て欲しい。
俺がこれまで人生を送った中で好きなタイプに当てはまる子は一人もいない。それもそうだ。だって、その好きなタイプっていうのはアニメを見てそう思っただけだし、三次元にいたとしても好きになれる自信がない。二次元キャラに一度心を奪われてしまえば、三次元の子を好きになることなって結構難しいと思う。その子がよほど胸キュンするような行動を見せない限り。
今なお草むしりの作業を行なっている奈々、明日香、雪の三人を見る。
この三人ともそれぞれ個性があり、魅力というものが備わっている。
例えば、奈々に関しては前向きというか、ポジティブだし、ちょっとアホだけど、そこが逆にいいというか……容姿も悪くはないし、彼氏ができてもおかしくはない。明日香についてはもう言うまでもないくらいにパーフェクトヒューマン。雪はいつも無表情で何を考えているかよくわからないけど、最近少しわかってきたような気がする。嬉しい時は鼻の穴がぷくっと開く。たぶんあっていると思うが、まだ確証が持てていないから断言はできない。けど、表情に感情が出ない分、体のどこかにその合図が出ていると俺は思う。今後も関わり合いはもちろんあるだろう。その過程で少しずつ探していけばいい。でも、一番いいのは雪が感情を表情に出してくれることなんだけどな。
そう思いつつ、俺は暑い日差しを受けながらせっせとグラウンドの草むしりに取り掛かった。まだ一限目が始まったばかり。終わる頃にはどうなっているだろうか……はは。熱中症で倒れるだけは避けよう。
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