第20話 体育祭の準備①
翌日から体育祭に向けた準備が午後の授業時間を使って行われた。
まず最初に決めなければならないのは各参加競技である。
体育祭の役員や係員については部活動員だったり、各委員会で取り決めが事前に行われているためそこに関してはなんの心配もない。
各学年が一体となって披露する演目に関しても一学期後半あたりから練習が入り、あとは本番の立ち位置だけとなっている。
体育委員男女二名のうち男子が教卓に立ち、女子が白チョークを手に持ちながら黒板側に待機。黒板には各競技名が書かれており、その下には括弧書きで数字が書かれている。その数字はおそらく参加できる人数を表しているのだろう。
体育委員の司会進行のもとで競技名が呼ばれていく。その度に教室内は手を挙げたり、挙げなかったり。人気が高いものに関してはジャンケンだ。
うーん。何をしようか?
俺は黒板に書かれている競技名を見ながら悩んでいた。
別にやりたい競技などないし、できれば楽なものがいい。だけど、どれが楽でどれがハードなのかまったく検討がつかない。全部ではないにせよ、書かれている競技名はほとんどが知らないものばかりだ。名前だけじゃ全然想像がつかない。
「春樹はもう何するか決めたか?」
後ろの席にいる豊が声をかけてきた。
「いや、決めてない。そういう豊はどうなんだよ?」
「実を言うと、俺もなんだよな。名前だけじゃどれが楽なものなのか検討がつかなくてよ」
「豊もかよ……」
まさか意見が一致しているとは……なんか複雑な気分。
「とりあえず最後に残ったものでいいんじゃないか? 残り物には福があるって言うしよ」
「それもそうだな……」
ただみんなどれが楽なものなのか知らなければいいんだけどな。
もし知られていたら必然的にその種目はすでに取られているわけであって、残るのは当たり前のごとくハードなものになってくる。
ところで奈々と明日香は何をしたのだろうかと思い、黒板の方に視線をやる。
各競技名の下には決まった人の名前が書かれているのだが……ぱっと見た感じだと奈々と明日香はまだのようだ。ついでに冬……じゃなくて雪の名前も探してみる。うん、ないね。
「明日香は何にするんだ?」
俺は隣の席にいる明日香に声をかけた。
「う、うーん、まだ考え中、かなー?」
「そうか……」
とは言いつつも、先ほどからちらちらと視線を感じる。特に奈々、明日香、雪が俺の方をちらちらと見ては何やら思案顔になっているし。奈々と雪はともかくとして、なんで明日香まで俺の方をちらちらと見るんだよ……。俺のことが……って、誤解してしまうだろ……。並大抵な男だったら絶対に誤解してたわ。
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