第19話 二学期が始まる①
今日から二学期が始まる。
約一ヶ月半の長い夏休みもあっという間に過ぎ、また勉学に励む毎日が始まってしまう。
そう思うと、憂鬱になってしまい仕方がないのだが、それよりも気がかりなことがある。
花火大会の日。
俺は衝撃な事実を知ることとなった。
――親父の隠し子……。
ただでさえ、実母とは双方の浮気が原因で離婚したクズ親なのにさらなる上をいくとは思ってもいなかった。
例え、一度は浮気したとしてもこれまで俺を見捨てずにここまで育ててくれたことは紛れもない事実。そのことに関しては忘れてあげようと思っていた矢先の出来事だ。
本当はこのことについても親父と一度話さなくてはいけないのだろう。どういう経緯でそうなってしまったのか、相手方とは今なお連絡を取っているのか……その他諸々。
親父もあの後何度か俺に話しかけようとする仕草を見せていた。だが、俺はずっとシカトし続けている。まだ隠し事があるんじゃないか? ただでさえ複雑な家庭環境なのにさらにややこしくなるのは嫌だ……そういったことに俺は恐れているんだと思う。
気がつけば、もう学校に到着していた。
いつの間に家を出たんだと思いつつ、自分のクラスへと向かう。
教室に入ると、すでに過半数の生徒が来ていて、それぞれのグループに集まり、夏休みの話題で持ちきり状態だ。
そんな中で俺は真っ先に奈々の姿を捉える。教室の前方、教卓付近に奈々はおり、互いの視線が交わってしまう。そして、一秒も経たないうちに俺たちは視線を逸らした。
――気まずい……。
たぶん奈々も同じなんだろう。ちらちらと奈々の様子を確認するが、顔が若干赤い。
「はるくん、今がチャンスだと思うよ。えいっ」
一緒に登校してきて隣にいた明日香が俺の背中をぽんっと押す。
俺はその反動で奈々の目の前に立つ。
――余計なことをしやがって……。
まだ心の準備ができていないっていうのによ……。
「な、奈々」
奈々が俺の方に顔を向ける。不安でいっぱい……といったような瞳をしている。
ここは普段通りだ。普通にいつものように接すればいい……あれ? 俺っていつもどんな風に奈々と接していたっけ!?
夏休みのせいかこれは? 夏休みがあったからいつもどうしていたのか忘れたのか?
とりあえず落ち着け俺。何を焦っている。目の前にいるのは超絶可愛い妹ではないか……ちょっと頭はおかしいけど。
「お、オハーヨ。ゲンキソーデナニヨリダーヨ」
どこの外国人なんだよ俺はああああああああああああああああああああああ!
いつも通りを意識しすぎたか? カタコトになっちゃったよ。
その様子を見ていた奈々はポカーンとしたような顔をした後、ぷっと唐突に吹き出す。
「なんですか? その挨拶は……」
腹を抱えて大笑いされた。しかも指差されるし……。
なんか奈々を気にしてたのがバカみたいに思えてきた。何気になってんだよ。所詮は妹みたいなもんじゃないか。
「悪かったな、変な挨拶で」
俺はぶっきらぼうにそう返すとそそくさと自分の席へと向かった。
明日香はなんとも言えないような表情をしながらも「まぁなーちゃんも元気そうだったしよかったんじゃないかな?」と苦笑い。
それについてはまぁ明日香の言う通りなんだけどな。奈々が変に落ち込んだりしていなくてよかったことが唯一の幸いだろう。
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