第16話 実母の再婚相手①

 夏休みも中盤に差し掛かった頃。

 俺は昼食を取り終えた後、調べ物があるということもあって、昼から図書館に向かっていた。

 この街に引っ越してきてまだ半年も経っていないが、ある程度どこに何があるかということだけは把握している。それに今の時代はスマホという文明の利器がある。これさえあれば、例え道に迷ったとしてもGPSを駆使して現在地を割り出せることも可能だ。

 それにしても……暑い。暑すぎる。今日も今朝から三十度を超える猛暑日。空を見上げれば、天高く昇った太陽が俺を容赦なく照りつけ、道路の向こう側を見ると、アスファルトの温度が高いせいか、陽炎までできている。

 日射病と熱中症だけは気をつけないとと心がけながらも喉が渇いたということもあって、すぐ近くにあった自販機で飲み物を買っていると、後方から一台の高級そうな黒塗りのセダンが走ってきた。

 その車はなぜか俺のすぐ隣で止まると、助手席の窓ガラスが降りる。


「春樹久しぶり〜」


 そう声をかけてきたのは俺の“実の母親”だった。

 俺はいきなりの出来事でどう反応していいのかわからないでいた。


「春樹、話があるの。今から私たちと一緒に来れない?」

「……どこに行くんだよ」


 俺は警戒心を極限まで高める。

 たとえ実母だとしても一度は俺を捨て、男の方にいったやつだ。容易に話を聞いていては何をされるかわからない。

 実母は俺の様子を見ると、クスッと吹き出す。


「そんなに警戒しなくてもいいわよ。春樹を拐うとか考えてないし、それをやってしまえば、私たちは誘拐犯として捕まっちゃうからね。とりあえず近くのファミレスでいいかしら?」

「ファミレス? なんか話をするんだろ? そんなところでいいのかよ」

「大丈夫だわ。今日は別に大事な話とかではないから。あ、でも、大事ではないとは言ったけど、大事ではあるね」

「結局どっちなんだよ……」

「まぁ、私たちにとっては大事なことかもしれないわね」


 実母はそう言うと、「後ろの方に乗って」と促す。

 果たしてこのまま乗ってもいいのだろうか……と、一瞬考えたもののここはひとまずついていくことにした。もし何かあったら、文明の利器であるスマホで通報すればいいだけのことだしな。警戒心だけは念の為このまま維持しておこう。

 俺は後部座席の方に乗り込むと、車はすぐさま発進した。

 運転席にはハンサムな中年男性がいるけど……この人は一体……?

 

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