第15話 うーみーだー!!⑥
その日の夜。
俺たち三人は別荘の庭にてバーベキューを楽しんでいた。
結局あのコンテストでは最年少出場者である小学生の女の子が優勝となり、奈々と明日香は互いに敗れてしまった。
そのため今焼いている牛肉などの食材は明日香が自家の富を使って調達したものである。
「やっぱりA五ランクの牛肉は違うなぁ……」
俺は食べながらそう呟いた。
匂いと言い、脂ののりと言い、何もかもが通常のスーパーで売られている牛肉とは違う。
舌を超えていない一般人の俺ですらわかるこの違い。これが鹿児島県産黒毛和牛か……。
俺の呟きに明日香は満足そうに微笑む。
一方で奈々はというと、先ほどのコンテストの結果が悔しかったのか、若干やけ食いな感じで高級肉を貪り食っていた。
奈々の近くに置かれている紙皿の上にはもうすでに十本ほどの串が置かれている。
――どんだけ食うんだよ……。
後で腹を壊さなければいいんだけど……。
そう思いながら見ていると、明日香が隣に移動してきた。
「今日はいろいろとありがとう」
「いや、俺は何もしてないし、むしろ礼を言わないといけないのはこっちの方だよ。別荘と言い、何から何まで準備してくれてありがとな。おかげで楽しい一日になったよ」
こうして三人で楽しく過ごせたのも明日香がいてくれたからに他ならない。
と、ちょうどその時に花火が打ち上げられた。
夜空には光り輝く一輪の花が咲いてはすぐに散っての繰り返しである。
ふと、隣を見ると明日香は花火に夢中になっていた。
「やっぱり花火って綺麗だよね」
「あ、ああ、そうだな……」
「見ていると、なんだか人生がちっぽけに思えてしまうよ」
何を意味して言われた言葉なのかわからない。
でも花火というのは本当に人生と同じかもしれない。ちょうど打ち上がっている最中はいわゆる成長期にあたり、ぱっと咲いた瞬間が人生で最も最高潮の時。そしてそこからだんだんと光が失われて最終的には無になってしまう。
そう考えると、人間の一生というものは何というか……上手く表現できないけど、悲しいものだ。
「三宮さん! おかわり!」
二人で花火を仰ぎ見ていると、奈々の声が聞こえてきた。
俺たちは二人して後ろの方を振り返る。
バーベキューの網にはもう何も残っていなかった。
「いや……本当に食い過ぎだって」
「大丈夫だよ。心配しないで」
そう言われてもなぁ。奈々は普段から少食だったはず。
学校でも昼食時はサンドウィッチというスタイルなのにそれを遥かに上回るカロリーを摂取している。
――後で吐かなければいいんだけど……。
「ちょっと待ってて。今から新しいお肉を取りに行くからさ」
明日香は一旦別荘の中に入ると、キッチンの方へと向かっていった。
☆
一泊二日のちょっとした海旅行はようやく終わりを迎えようとしている。
帰りの車の中では明日香と奈々はすぐに眠りへとつき、俺も睡魔と格闘していた。
昨日の夜は奈々が俺の部屋に襲撃してくるのではないかと恐れ、夜中の二時まで起きていたのだが……どうやら俺の思い過ごしだったらしい。
そのせいもあって、非常に寝不足。もう無理。寝たい。
俺は重たい瞼をゆっくりと閉じる。
冷房も効いた心地よい車内の中、俺がすぐに熟睡してしまったのは言うまでもないだろう。
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