第14話 おっぱいが小さくてはいけませんか?③
試着室にてそれぞれ選んだ水着の感想を述べ、購入が済んだ後。
奈々がお手洗いに行くということで一旦席を外した隙を見て、俺は明日香に手を引かれながらどこかへと連れられていた。
ある程度離れた場所まで来ると、明日香は俺の手を解放し、くるっとこちらの方に振り返る。
「午前中の借り、さっそく返してもらってもいいかい?」
「借り? 今じゃないとダメなのか?」
「うん、今じゃないとダメなんだ」
明日香はそう言うと、俺の横に移動するなり、腕を絡ませてきた。
「お、おい……」
いきなりの行動に戸惑いを見せていると、明日香は俺の方を見上げ、にこっと微笑む。
「一度でいいからはるくんとこうしてみたかったんだ。大勢の目の前で恋人みたいなことをね」
顔が近いし、胸も当たってるし、いい匂いするし……何がなんだかわからねぇ!
「そ、それってどういう……」
脳がうまく働いてくれないのか、思考回路が停止し、この状況がまったくもって読めないし、何が目的でこうしているのかすら理解不能だ。
「意味は……ないよ。ただ、幼なじみとしてこうしたいって思っただけなんだ」
一瞬明日香の表情が切なそうに見えた。
「そ、そうか……」
周りの視線が俺たちに突き刺さる中、ショッピングモール内を適当に回ってみる。
奈々に関しては後で急用ができたということを連絡しておけばいい。もし鉢合わせてしまった場合はまたその時考えよ。
「そ、それにしても借りの返しがこれだけでよかったのか?」
俺は歩きながらそう訊ねた。
すると明日香はどれぐらいか沈黙した後に口を開く。
「うん。はるくんには何気ないことだとは思うけどね。幼なじみとこうして二人きりで歩くことは滅多にないだろ?」
「そうか? 平日はほぼ毎日一緒に登下校したりしているじゃないか」
「登下校とは違うよ! 休日に二人きりで過ごすことって意味だよ!」
明日香は頬を膨らませる。
何か機嫌を損ねるようなことを言っただろうか?
「と、とりあえずどこか立ち寄ったりしないか? このままぶらぶらするっていうのもつまらないだろ?」
「ぼくは別につまらなくはないけど……ねっ!」
明日香が思いっきり俺の足を踏んづけた。
「イタっ?! 何すんだよ!」
「ふんっ! 知らないっ!」
「知らないって……」
俺は思わずため息が漏れてしまった。
何で怒らせてしまったかわからないが、まぁいいか。
この後、奈々と鉢合わせするまでの間、いろいろな専門店を見て回っては明日香と楽しんだ。
☆
「それにしてもお兄ちゃんは酷すぎますっ!」
ショッピングモールでの帰り道。
外はすっかりと橙色に染まり、セミの鳴き声も徐々に聞こえなくなってきた。
そんな中で奈々は紙袋を片手にプンスカと憤慨している。理由に関しては……俺の口から言わなくてもご察しいただけるだろう。
「私という妹を置いてけぼりにした挙句にただの幼なじみである三宮さんとお買い物を楽しんでただなんて!」
なぜか「ただの」を強調する奈々。
「それに関しては本当にごめんって! 今度どこか一緒に買い物とか付き合うからさ。な?」
「ぼくからも一応謝るよ。連絡もなしにはるくんを連れ回したりしてごめんなさい。でも、ただの妹がそこまで怒る必要はあるかな? 普通の家庭の妹であれば、兄を毛嫌いしている……という話も珍しくはないと思うけど?」
「そうですね。私からしてみれば、その普通と言っている妹の方が信じ難いですし、妹はお兄ちゃんを敬愛することに意味があると思います。むしろお兄ちゃんのことを嫌っているのであれば、その子は妹とは呼べません」
「そうかい? そもそも妹というのは血縁関係にある年下の女の子のことを指す。もちろん血の繋がりがない義理もそう呼ぶことはできるが、どちらにせよ好き嫌い関係なく法律上では妹扱いになる」
「たしかにそうですが、法律にも限度があると思います。妹の魅力というのは法律では計り知れませんし、大体兄妹間で結婚ができないというのもおかしいと思うんです。種の保存だったりと、古来から人は近親相姦をしてきました。これは紛れもない事実です。なのに現代社会になって、兄妹間での性行為はタブー扱いになったり……おかしいじゃないですか!」
「よーし! もうわかったから二人とも一旦落ち着こう。な?」
話のスケールがどんどんと大きくなる前に俺は一旦ストップをかけた。
俺の正直な気持ちとしては明日香の言っていることがもちろん正しいと思っている。
だが、俺と奈々は血の繋がった兄妹ではない。
だから奈々が俺のことをどう思っていようが法律に引っかかることなく問題ないと思っている。まぁ、考え方に関しては問題ありなんだけどな。
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