第14話 おっぱいが小さくてはいけませんか?②

 近場にあるショッピングモールにやってきた。

 店内は夏休みということもあってか、人で多少混んでおり、専門店街も大いに賑わいを見せている。

 そんな中で俺たち三人は二階にある水着ショップへと来ていた。

 ショップ内はほとんどが女性客で水着の種類やデザインも豊富に品揃えられている。


「お兄ちゃんには私たちのビキニ姿の感想を言ってもらいます」

「感想?」

「はい。私たちが自ら選んだビキニを試着しますので、その感想を言ってもらいたいんです。似合ってるのか似合っていないのか。感想と言っても別に難しく答えなくてもいいです。ただ簡潔な感じでもいいのでとにかく感想だけは言ってください」

「わ、わかった」

「それじゃあ、さっそく選びますので、お兄ちゃんは自分の水着でも見ていてください」


 そう言うと、奈々と明日香はそれぞれ目当ての商品を探しに行ってしまった。

 俺も購入する気はないが、待っている間はすごく退屈である。奈々が言っていた通り仕方なく、男性用水着売り場で適当なものを見ることにした。



 それから数十分。

 そろそろ水着を見るのにも飽きてきた俺は、奈々たちを探しに向かうことにした。

 ――たかが水着選びで時間かけすぎだろ……。

 そう思いつつ、ショップ内を歩いていると、奈々の姿を発見した。

 買い物かごの中に何着かビキニを入れ、何かをじーっと見つめたまま、微動だにしない。

 声をかけようかとも思ったが、その様子に少し躊躇ってしまう。

 ――何を見てるんだ?

 俺は奈々が見ている方向に視線を向ける。


 “増量パット! これであなたも豊かなバストに!”


 そのような謳い文句とともに棚の方にはパットが売られていた。

 たしかに奈々の胸は小さい。お世辞にも大きいとは言えず、大きさ的にはAくらいだろうか?

 やがて奈々は俺の存在に気がつくと、顔を赤くして誤魔化すようにコホンと咳払いをする。


「ちょ、ちょうどよかったです。今から呼びに行こうかなと思っていたところだったので」

「そうか」

「三宮さんももう選び終えたと先ほど連絡をもらったところだったので、もしかしたら試着室の方にいかれてるかもしれません。私たちもさっそく行きましょう」

「ああ……」


 奈々は試着室に向かう途中、名残惜しそうな表情で一瞬ちらっと後ろを振り返った。

 ――奈々大丈夫だよ。母さんの胸を見る限りでは、遺伝的に考えてもまだ希望はあるから!

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