第13話 勉強会②
宿題をやり始めて数十分が経過した。
その間明日香と奈々は一言も喋ることなく、黙々と宿題に取り掛かっているのだが……ヤバい。集中できねぇ!
宿題は少ししか進んでおらず、シャーペンを握っている手もほとんど止まったままの状態。別にわからないからとかそういうわけではない。現に今は漢字帳をしていて、現代文の教科書に載っている熟語を写すだけという小学生でもできるようなシンプルなものをしている。
こうして集中できないのも奈々が隣にいるから……。実妹ではないということを知ってしまった翌日がこれだ。あれだけいつも通り接しようと心がけていたというのに……。
「ん? どうしたのお兄ちゃん?」
奈々がこちらの方に視線を向けたところで凝視していたことに気がつく。
「あ、い、いや、なんでもない」
俺は慌てて顔を逸らす。
あっぶねぇ……って、もうアウトだけど、いかんいかん。無意識に奈々の方に視線が向いてしまっていたようだ。
奈々はきょとんとした表情をしながらも首を傾げ、カバンの中から手鏡を取り出し、自分の顔を写す。たぶん顔に何かゴミが付いていると勘違いしたのだろう。
ひと通り確認を終えたところで奈々は手鏡をカバンの中にしまうと俺の方をちょんちょんと突いてきた。
「もしかして私のことが気になるんですか?」
ドキリ。
奈々が耳打ちでそう囁いできた。
「べ、別にそんなわけないだろ……」
俺は小声でそう返すと、奈々はニヤリと小悪魔的な笑みを見せる。
「でもお兄ちゃんの瞳、すごく泳いでますよ? もしかして図星でしたか?」
ヤバい……上手く切り交わさないと。
「そ、そんなわけ――」
「ちょっと二人とも静かにしてくれないかい?」
俺が否定しようとした時、明日香が割って入ってきた。
「今は勉強会だ。その間だけは静かにしてくれたまえ。もしできないのならなーちゃんにはすぐに帰ってもらうことになるが?」
「な、なんの権限があって三宮さんがそういうことを言えるんですか!?」
「じゃあ、この家に住んでいるはるくんに訊ねてみるかい?」
明日香の提案で二人の視線が同時に俺の方へと向く。
「あ、ああ……明日香の言う通りだ。静かにできなかったら帰ってもらう。いいな?」
「うっ……わかりました……」
奈々は若干しょぼんとしながらも再び宿題の方に戻っていく。
なんとか危機を脱することができ、内心ホッとしながらも気を取り直して、幹事長を進めようとした時、いきなり足の脛を思いっきり蹴られた。
「〜っ!」
声無き悶絶をしていると、明日香が俺の方をじーっと見つめていることに気がつく。
その表情は少し怒っている風にも見えた。
何で怒っているのかはわからないが、とりあえず先ほどの件については助かったことだし……何かしらの埋め合わせ的なことをした方がいいのかもしれない。
痛みが引いたところで俺は何事もなかったかのように漢字帳を進めていくのだった。
【あとがき】
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