第13話 勉強会①
小鳥の囀りとともに目を覚ますと、カーテンの隙間からは溢れ日が刺していた。
ベッドから上半身を起こし、近くにあったスマホで時間を確認すると、午前六時半。
いろいろと気持ちの整理をしているうちにいつの間にか寝てしまったんだなということを悟りながら、今だに制服姿であることにも気がつく。
とりあえず顔を洗いに自室から出ると、家中は妙に静まりかえっていた。
玄関の方になんとなく足を運ぶと、親父の靴がない。もう会社の方に出勤したのだろうか?
そう思いながら洗面所へと向かい、ついでにシャワーも浴びる。
さっぱりしたところで昨日の昼から何も食べていないということで腹の虫も鳴き声をあげている。
食欲はあまりないにせよ、やはり何か食べておいた方がいい。冷蔵庫の中を適当に漁り、良さげなものをぱくぱくと食べていると、ふとインターホンが鳴り響いた。
――誰だ? こんな朝早くに……。
時間的にはまだ午前七時半前。夏休みにも入ったと言うのに誰がこんな朝早くに訪ねてくるんだろうか?
そう思いながら、ダイニングテーブルから席を立ち、インターホンの画面を覗き込む。
そこにいたの白いワンピーズを来た明日香と「お兄ちゃんは私の嫁ッ!!」という癖の強い新たなTシャツとジーンズ柄のショートパンツを履いた奈々がいた。
奈々とは昨日のこともあり、少し顔を合わせづらい。
が、かと言って出ないというわけにはいかない。
俺は朝食を食べ終え、キッチンの流し台に皿を漬け込むと、渋々といった感じで玄関ドアを開ける。
「おはようございます! お兄ちゃん」
「おはよう。はるくん」
「一体こんな時間帯から何しに来たんだ?」
俺はドアの隙間から顔だけを覗かせて、そう問いかけた。
すると、奈々と明日香は互いの顔を一瞬見合わせる。
「もしかして見てなかったですか?」
「昨日の夜、メールを送ったはずなんだが?」
そう言われ、ポケットの中に突っ込んでいたスマホを取り出し、メールを確認する。
たしかにメールは届いていた。
「勉強会をするって書いてあるけど……」
「はいっ! 早いうちに夏休みの宿題を終わらせようという話になりまして、それで場所はどこがいいかなと三宮さんと話し合った結果、お兄ちゃんの家になりましたっ!」
「お兄ちゃんの家になりましたっ! じゃないよ! 何当選しましたっ! みたいなノリで言っちゃってるの? そもそも俺抜きで話しちゃいけないだろ……」
「そこのところは申し訳ないと思ってるよ。でも決まったものは仕方ない。そうだろ?」
「そうだろって、仕方なくないだろ。……まぁいいや。リビングでいいなら入って」
これ以上グダグダ言っても仕方がない。早いところ諦めた方が精神的にも得策と言えるだろう。
明日香が玄関でサンダルを脱いでいる間、奈々が俺の横を通り過ぎ、同じく靴を脱ぎ始める。
今日はやけに奈々のことを意識してしまう。
これもきっと昨日のことがあったからに違いないけど、これだと変に思われてしまう。いつも通り。いつも通りにすればいい。
俺は小さく深呼吸をすると、一旦自室の方に戻り、宿題を取り出す。
再びリビングの方に向かうと、それぞれ席に着いており、さっそく宿題に取り掛かっていた。
俺もひとまず先ほどまで座っていた席に腰を下ろす。
目の前には明日香が座っており、隣には奈々がいる。二人とも夏休みの宿題を黙々と進めており、話しかける余地すら見当たらない。
――まぁ一人でやるよりかは集中できるからいいか……。
さっそく俺も宿題に取り掛かった。
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