第11話 イタズラしてはいけませんか?
無事に期末考査も終わり、一学期も残りわずかとなった頃。
朝、いつも通り周りの鋭い視線を受けながら明日香と登校し、靴箱に向かうと、俺の棚に何か入れられているのを発見した。
俺はひとまずそれを取り出す。
見た目は茶色のレター封筒で表と裏を確認するも差出人の名前すら書かれていない。
「はるくんどうしただい?」
シューズに履き替えた明日香が横から覗き込んできた。
「あ、いや、なんでもない」
俺はすぐさま封筒をポケットの中に突っ込むと、すぐに靴からシューズへと履き替える。
明日香は少し怪しげな眼差しを向けてはいたが、その後何も聞いてこなかったあたり、上手く隠し通せたようだ。
その後明日香とともに教室へと向い、自分の席にカバンを置くと、すぐに席を外す。
「はるくんどこに行くんだい?」
自分の席から離れようとした時、隣の席で授業の準備をしている明日香に呼び止められた。
「トイレだよ。朝からちょっと我慢しててな」
そう言うと、明日香は少し頬を赤らめる。
「そ、そうか……変なことを言わせてしまって悪かったよ」
「いや、いいんだ。じゃあ行ってくるよ」
「あ、ああ……」
俺は教室を出ると、駆け足ですぐに男子トイレの個室へと籠る。
そして、ポケットの中から例の封筒を取り出すと、便座の上に腰を下ろした。
――一体誰がこんなものを……。
一瞬ラブレターかと思ったりもしたが、見た感じだとそれにはまったく見えない。
だとすれば、他に何があるんだという話になってくるのだが、イタズラにしても少し違うような気がするし……。
とりあえず今いくら考えてもムダだ。俺は丁寧に開け口を破り、中に入っていた二つ折りの紙を取り出すと、そのまま開いて中身を読む。
“兄さん。いつになったら私の存在に気がついてくれるのですか?”
「は?」
思わず口から漏れてしまった。
書かれていたのはたったこの一文だけ。そのほかには何も書かれていない。
一体どういう意味なんだ? 兄さんって……。
たしかに俺には奈々という妹がいるが、それ以外にはいない。
じゃあ、これは一体……やっぱりイタズラなのか?
今の時代にこんな古典的なイタズラを仕掛けてくる奴がいるんだなと思ったところでSHRが始まるチャイムが鳴り響く。
「ヤバっ!」
俺はポケットの中に手紙を突っ込むと、慌ててトイレから出た。
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