第10話 期末考査②

 期末考査から二週間が経過した。

 梅雨はもうすっかり明け、七月初旬。外では強い日差しとじりじりとした暑さが襲いかかり、気温も高く夏本番を思わせる。

 そんな中で学校では放課後、先日行われた期末考査の学年順位が一階の職員室前の掲示板に張り出されていた。

 職員室前はいつもならほとんど生徒は通らないところではあるが、今日に限ってはその真逆。生徒たちに溢れ、逆に先生方が通れないといった感じで困惑している。

 まぁ学年順位を発表するにせよ、ここしか掲示板がないからな。学校の設備不足ということでこればかりは仕方がない。

 俺は明日香、奈々、豊の四人で掲示板前に向かうと、張り出された学年順位を凝視していた。

 やはりさすがと言わんばかりに堂々と一位のところに明日香の名前が書かれており、総合点数も満点。文句の付け所がない。

 一方で俺は明日香の隣に書かれていた名前に目を疑っていた。

 とうとう勉強のしすぎで目がイカれてしまったか? ついそう思ってしまうほどの衝撃だ。隣にいた豊にも何度か確認してもらったけど、間違いない。

 明日香の横には同列一位で奈々の名前が記載されていた。点数も全教科満点。

 ――何がどうなってるんだ?

 俺は思わず奈々の方に視線を向ける。


「お兄ちゃん。これで文句ないですよね?」


 奈々はにこっと微笑んだ。

 たしかに以前の中間考査では次酷い点数を取ったら口を聞かないみたいなことを言ったような気はするけど……これはこれでいろいろと聞きたいことがある。

 その聞きたいことの中の一つを奈々にぶつけてみることにした。


「何があったんだ? この前まで最下位だったじゃないか……」

「何もないですよ。ただ普通に勉強しただけです。その他は何もありません」


 普通に勉強しただけで最下位からトップになれるのだろうか?

 もしかしてカンニング……とか?

 そう思ったが、奈々の席と明日香の席は随分と離れているし、監視役の先生もテスト中はずっと席を回っていた。あの状況でカンニングなどほぼ不可能に近い。

 奈々がこれほどまでに頭が良かったとは……。地頭がいいとはこのことを言うのだろう。


「はるくんも結構いい順位に食い込んでるじゃないか」


 明日香が掲示板の方に指を差す。

 その先には俺の名前が記載されており、上には「十五位」の文字が書かれていた。

 前回が七十位だったということもあり、結構な大健闘。

 一応豊も順位的には上がってはいたが、それでも七十八位という結果だった。

 それにしてもこの順位表を見て思うことがあるのだが、ウチのクラスって頭がいい人たちが集まりすぎなのではと思ってしまう。

 あの学級委員長である冬井さんも明日香、奈々に次ぐ三位。そのほかにもちらほらと上位にクラスメイトたちの名前がいくつか記載されている。

 とりあえず中間考査での失態は取り戻せそうにはあるが、奈々に負けてしまうとは……なんとも言えない屈辱が襲ってきた。


「三宮さんさすがですね。学年一位をいとも簡単に取られるなんて」

「それはなーちゃんこそだよ。普通に勉強するだけで全教科の満点などそうそうに取れるものじゃない」


 そして俺の斜め後ろでは、奈々と明日香が何故かばちばちになっていた。

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