第8話 恋のライバルの邪魔をして何がいけないんですか?②

 その後の部活紹介は校舎案内も兼ねて、滞りなく進んだ。

 各部活の活動内容に関しては担任からもらったらしい生徒会が作ったパンフレットを一度目に通しているらしい。

 全部の紹介が終わったところで俺たちは再びクラスの教室へと戻った。

 時間は午後五時前。教室を出る間際までいた生徒たちはいなくなり、廊下にも誰一人いない。教室内は俺たち三人だけだ。

 窓から差し込む夕日が淡く照らしている。

 明日香がお手洗いに行くということで一旦教室から離れていったところを見計らって、俺は奈々に問いかけた。


「奈々、今日はなんで協力してくれたんだ?」

「へ? それってどういう意味ですか?」

「そのまんまの意味だよ。明日香のことをどこか敵視してた菜々がなんで部活紹介を自分から協力してくれたんかなってちょっと気になってさ」


 そう言うと、菜々は少しの間沈黙してしまう。


「お兄ちゃんを独占したいからですよ……。あんなに色白で可愛い三宮さんが近くにいては私の立場が危ういじゃないですか……。私だけのお兄ちゃんを盗られないがためにライバルを追いやろうとしてはいけませんか?」


 奈々の表情は先ほどとは違い、寂しそうでかつ悲しく見えた。

 奈々の大きな瞳が何かを訴えかけているように俺を捉える。


「べ、別にいけないっていうわけではないし、そもそも明日香は俺のことを……」

「そうですよね。三宮さんはお兄ちゃんにとってただの幼なじみであって、それ以上でもそれ以下でもないということはわかっています。私の少し考えすぎたったかもしれませんね」


 奈々は消え入りそうな微笑みを見せたところで、お手洗いに行っていた明日香が戻ってきた。


「二人ともどうしたんだい? なんか暗い顔してるけど?」

「い、いや、別になんでもないぞ? それより部活は決まったか?」

「うーん……正直なところを言うと、これだっていう部活はなかったんだよね。だから、もう少し家で考えてみるよ」

「そっか。その方がいいのかもしれないな」

「うん。それと、なーちゃん。今日は付き合ってくれてありがとう」


 明日香が奈々の両手を優しく握る。

 奈々はそれに対し、はっとなる。


「私は別に……」

「ううん、なーちゃんがいてくれたおかげでいろいろとわかったこともあるしね。今日は本当に助かったよ」

「それならよかったです……」


 奈々は浮かない顔をしつつも、小さく微笑んで見せる。

 邪魔をしようとして、紹介したのにお礼を言われた奈々は今きっと複雑な感情にさえなまれているのかもしれない。


「じゃあ、そろそろ帰るか。もう五時とっくにすぎてるしな」


 今日のところは三人で帰ることにした。

 カバンを手に教室を出て、靴箱で靴に履き替え、校門を出る。

 こうして三人で帰路を歩いていると、街は違えど、小さい頃を思い出してしまう。

 また三人で帰る日が来るとは……人生何があるかわからないとはよく言ったものだ。

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