第6話 中間考査の成績が悪くても許してくれますか?②

 特別棟二階の一番奥にある空き教室にて、俺は解答用紙をもう一度目視で確認した。

 が、結局何度見ても同じ。


「奈々。今までゼロ点以外とったことがないってさっき言ってたよね?」

「はい……。お恥ずかしいことに……」


 本当にだよ……。その「お恥ずかしいことに」って謙遜の意味でよく使われることだけど、そのまんまだからね?

 俺は思わずため息を漏らしてしまう。

 奈々がここまで頭が悪かったとは……。これまでは頭がいいとばかり思っていたものだから余計にダメージが大きいというか、ショックが大きいというか……とりあえずなんとも複雑な気分だ。


「というか、そもそもよくこの学校に入学できたな。ここってまぁまぁ偏差値は高いし……もしかして何かしらの推薦とかか?」


 そう聞くと、奈々は首を左右に振る。


「いいえ、お兄ちゃんと同じ一般入試ですよ」

「……いや、ウソだろ?」

「本当ですよ! 私やればできる子なので入試前は結構勉強したんですからね?」


 奈々はドヤ顔をしつつ、胸を反らす。


「なら……なら、なんで中間考査ではその努力をしなかったんだ!」


 俺は奈々の頭を拳でぐりぐりとする。


「い、痛いですお兄ちゃんっ! ちょ、ちょっともういいでしょ!? お兄ちゃああああああああんんんんんん!」

「次からはちゃんと勉強するように……いいな?」

「は、はいっ! しますがらあああああ!」


 涙目になってしまったところで俺は仕方なく解放してやった。

 奈々は「うぅ……」と唸りつつ、頭を両手で抱えながらしゃがみ込んでしまう。

 実際にはまだまだお仕置きは足りないくらいだが……これ以上やって本気で泣かれてしまっても困る。

 だから奈々には一番これが効果的だろう。


「次、期末考査の時に点数が悪かったら一生口を聞いてやらないからな?」

「え……え?! なんか罰が重過ぎませんか?!」


 奈々は思わず痛みも忘れて、立ち上がってしまう。


「そうか? 俺はそうは思わないけど?」

「いやいや、等価水準がおかしいですよお兄ちゃん! さすがにこれはウソ……ですよね? と言いますか、もうバレバレですよ! もう!」


 奈々が俺の胸元をポコポコと軽く叩く。


「まぁそう思うのならそれでもいいけどな。どうなっても知らないけど……」

「……え?」


 奈々の顔色が一気に蒼白していくのがわかった。

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