第5話 インデックスを超えるインデックス投資②

「おかげさまで元気よ」

MIUは何事もなかったように、返事をする。


大クマに命を狙われたMIUは、小クマの助けもあり、

さらに森の奥の隠れ家へ来ていた。

休息できたのも束の間、あっという間に大クマに見つかってしまった。

多分、小クマの後でも付けてきたのだろう。

最初から小クマのことを疑っていたのだ。


「よかった、よかった。やられたと聞いた時は本当に心配したよ!!」

どの口で言うか。私を殺そうとした男だ。

しかし、今口ごたえするのは得策ではない。


「じゃあ、還ろうか」

「漢字の変換ミスってますよ」

小グマが指摘する。

「あ。…ああ、帰ろうか」


今だ。

地に還そうとしたのがバレて指摘されて動揺している…?

今しかあるまい。


「小グマ!飛ぶよ!」

「クマは飛べません」

そう言いつつ力いっぱい飛ぶ。


ここは地下。前話ともしかしたら違うことを言っているかもしれないが、最新話が最新の解釈である。地下だ。


「おっと。そんなに離れてどうしたんだい?」

「ふん。大クマ。家族ごっこはおしまいよ。私全て聞いていたの」

「あっそう。話が早くて助かるなあ。じゃあインデックス刀ⅣすらまともにできないMIUさんは投資やめてください」

「それはできない相談ね。私、インデックス刀Ⅳをやり切るって決めたの」

「あっそう。で?俺のリターンについてこられるのか?」

言うや否や、大グマは身軽に、しかしその重厚な体をフルに活用して地面を蹴り、MIUに体当たりを仕掛ける。

これが大型個別株の威力か。時価総額がすごい。

なんとか間一髪のところで避けるが

「遅い遅い!そんなんじゃコロナショックのようなV字回復に乗り遅れるぞ」

すぐさま2撃目が飛んでくる。


大クマの持つ武器は大剣。

2mは優に超える必殺の刃だ。

それを巨体を生かし、軽々と振り回している。


「ねえ、そんなに強いなら私を戦わせないで自分で戦えばよかったのに」

MIUは当然のことを聞いてみる。

「まぁそうだな。ちょっとした出来心ってやつさ」

MIUにとっては、せいぜいかわすのが関の山。かわしきれない斬撃はインデックス刀Ⅳでいなすが、それでも衝撃が大きすぎる。


「このままじゃあ勝ち目はないわね。分かった。本気出す」

「わっはっは。今まで本気じゃなかったのか!面白い!」

「インデックスをバカにしたことを、後悔させてあげるわよ」

「2倍アクセル!」

「なんだレバレッジか?リスクに耐えきれるのか」

「インデックスの呼吸、肆の型…NYSE×NASDAQ」

「二刀流だと!?しかもNASDAQを使ってきやがった。いいぜ。こっちもMSFTで応戦してやるよ」


インデックスは1つではない。

S&P500とNASDAQ100指標を併用した二刀流の攻撃。

共に米国インデックスであり、あまりリスク分散にはならないが…

「インデックスの呼吸、伍の型…無限ナンピン買い!」

「くっ。個別株ではなかなかやりきれない…!無限ナンピンだと!」

市場は必ず上昇する。米国市場だって必ず成長する。

こうした下落時に攻められるのは、インデックスの強みである。


「インデックスの呼吸、禄の型…下落時一括投資!」

「バカな!一括だと!積立投資はどうした!?」

「インデックスの呼吸、質の型…積立+下落時一括投資!」

「ぐううう…インデックスのくせに、おい、おい、まじかよ…」


「これは…さすが僕が見込んだMIUだ。リターンが20%も上昇した」

そう。

レバレッジをかけなくても。

インデックス投資でインデックス投資を超えることができるのだ。


より成長率の高いインデックスを選択し。

積立だけでなく、下落時の一括投資を盛大に浴びせることによって。


「ぐうぅ…ぜい…なるほど、それがMIUの新しい力か。であれば、俺も本気を出すとしよう」

「個別株の本気か…それは投機ではないのか」

「うるさいね!流星一条!テスラ!!」

「おっと危ない著作権!」


大グマの渾身の一撃である。

MIUではとても--


「TQQQっていうのはね。3倍NASDAQなんだ。で、今最高の状態なんだよね。だってさ。3月の底から何%上昇したと思う?」

小グマがふらりと前に出る。

「貯めに貯めたこの力で押し通る!3倍レバレッジ!TQQQ!」

テスラの上昇エネルギー、そしてTQQQの上昇エネルギーがぶつかり合う…!!

「ええい!テスラでは力不足だと?であればインテルを…おいインテル?おい?何やってんだよインテルー!」

TQQQの技が入ってる。


MIUには為す術がなく。

ただただ、力と力のぶつかり合いを眺めているしかなかった。



「というわけでお祝いです!」

「ちっ。しょうがねーな」

「毒入ってないよね?小グマ、先に食べて」

「あ…それはできないのでMIUさんどうぞ」

「食べられないよね??」


単に積立をしたインデックス投資のリターンを20%もオーバーしてきたMIU。

投機に近い投資法で破格のリターンを手にしてきた米国個別株の申し子大クマ。

確かな分析力を元に短期レバレッジで財を成す小グマ。

2匹と1人がそろった。


「これからが楽しみですね」

「私は仕事したくないけどね」

「ふん。俺も趣味だからな。仕事はしないぞ」

「これからが心配ですね」


神の見えざる手【インビジブル・ハンド】

の侵攻がいつ始まるか分からない。


それでも。

それぞれの投資手法を以て戦い抜くことだろう。

まだまだMIUのインデックス刀Ⅳは磨かれていくはずだ。


「とりあえず今日は定期買い付けと…」

日々できることを淡々と続けていく。


それがMIUが選んだ道であった。

インデックス刀Ⅳと共に、今日もMIUは

戦い続けるのであった。





Tales Of MIUstocks~始まりの森編~


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る