第17話 しばらくログインしてなかったからってそんな顔でこっち見ないで

前の会社からなんか電話きてた、勿論でてない、だがその事実だけでモウマジムリ、しばらく何もしたくないって駄々こねるには十分なのぞ。


とはいえそれに縛られるのも癪なのでそんなわけで実年齢以外メンタルも体もおじさんな自分をどうにか若返らせようとマッサージに行ってきたわけです、60分諸々含め75 分揉みほぐしコースってやつをしてもらいにね! 


そしたら下半身や腕は痛気持ちいってやつの片鱗を味わえたのだけど肩周りから突然拷問がはじまったね、びっくり。


話がそれで終わりじゃないのよ。


マッサージで体ぽわぼわして機嫌よく帰宅した次の日から一週間くらいね、体調土砂崩れ、揉み返しってやつ? もうまじむりー。


慌てて通販でポカリなりゼリーなりをポチって一週間布団とフレンズしてその後の一週間で徐々に体力を回復させて、はて、一ヶ月経っちまった、へへへへ。


………だから、ほら、日がな一日療養しながらタブレットでアニメなりやうつべ(大手動画配信サイト)なりだらだらと湯水のごとく時間を消費して見ていたわけよ。


わけ、なのよ、あのー、だから、ね?


「そんな顔で私をみないでくれたまえ、えーと、名前なんだっけえーと、そう! ゴンザレス! 」

大体一月ぶりのログイン、場所はもちろん最後にいた森の中の川のすぐ近く、ちょうどきれいな空も眺められるお気に入りスポットなのだけど。


視界を埋めたのはそう、ペットのオークのイノシシフェイス、それもうり坊が近くにいる時の親イノシシみたいな風格を纏っている。


「グルルル!! 」

「わー! ごめんごめん! 体調崩しててね! これなかったの! 」

「グゥ……? グガァ? 」

「ほんと! ほんと! 」

なにを言ってるのかさっぱりわからないが怒られているのはわかる、そしてそんな時に自分がとる行動といえばそう、過去の自分に責任転移、先月の自分はなにをしてい……アニメとやうつべをゴンザレスを座椅子に見ていた…。


………ばかやろーじぶーん、なにやってんだー。

いやガチでなにしてんのよ、過去と現在やってること変わってないぞー。


「……グゥ」

ジトーりと睨んでくるゴンザレスことゴンちゃんの視線がいたい……うーむ、元社会人たるものここはひと肌脱がねばならないか……。


「ごめんーできるだけくるようにするからー……許して?」

「グ……! 」

お? ゴンちゃんの顔から陰っぽいのがなくなった……これは許された?


「グーグ♪ 」

ちなみにいうと今自分岩の上に座っててゴンちゃんは地べたに座って目を合わせてたんだけども、弾んだ声をだしたゴンちゃんがノシっと立ち上がって、後ろの土をぱっぱとはらって、手についた土もぱっぱして、キレイになった手を片方こちらに向けて来ましたと。


「ん? どしたのゴンちゃん」

「グーグ」

「ん? 」

厳つくしたイノシシフェイスのつぶらな瞳と視線があうのはいいのだけど……はて? なにをしたいのやら。


「ぐーぐ、グッ! 」

「なーに? 手? 自分の? 」

「グッ!」

「おう、なんだなんだ」

「グーグ、ググ」

なんとなくあげた手を取られて、痛くない程度に引っ張られる。


「何処か行きたいのー? 」

「グッ! 」

「んでついてきてほしいのー? 」

「ググッ!」

どこかに行きたいのねー……、でも動かなくちゃなのが……。


「えー……ゴンちゃんひとりで「グルルル! 」 あ、はい、行きます、よいしょっと」

「グーグ♪」 

しばらく相手できなかった負い目とめんどくささを天秤にかけるもんじゃあないね、うん。

運動がてらの散歩と思えばまあいいか、ゲームの世界とはいえ青空眺めながら歩くのもまた一興……おや? なんだいあれ


「ゴンちゃんちょっとまって」

「グ? 」

「なんじゃあれ」

おもたーい腰をあげて、伸びがてら上を向いたらなんと、空になんか書いてあるの。


なになにー?


【明日開催! ブラッド・ムーン強襲イベント! 】


なにー……あれ。


「グールル 」

「あ、ごめんいこうね 」

「グ♪ 」

歩きがてら運営のお知らせみるか……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る