第8話

1日考えても答えが出なかった瑠璃。


店長に断ろうと思い出勤する。


『ルリちゃーん、こっちこっち』サチさんに呼ばれる

「……はい」

『昨日見たよ一気飲み、やるね~』

「いえいえ」

『ユリアに目付けられたのは問題だけど、逆にそのままユリアを倒すのもアリだね~』

「とんでもないです」


『今日は女帝の出勤日、お楽しみに』

「……はい」


開店する。

と、よしさんが来店する。

『ルリちゃん』

店長に呼ばれる

『ルリちゃんご指名』

「え?」

昨日よりお洒落な、よしさん

『ルリちゃん、昨日はサオリがごめんね』

「いえいえ」

店長が一番高いシャンパンボトルを持って来る。

『ルリちゃん、これはお詫びだよ』

とよしさん。

「こんなに高価なもの頂けません」

『そんな事言ってたら、一人前のホステスになれないよ』

「まだ半人前未満ですみません」

『いいねルリちゃん、今日はゆっくり飲もう』

『ありがとうございます』

シャンパンのコルクを抜く店長。

グラスを出す店長

『店長も飲みたいのか』

『是非』

よしさんが店長のグラスにシャンパンを注ぐ。


今日はルリが飲み過ぎないように気を使っての店長が差し出したグラスだと、ルリも、遠目にユリアにも分かった。


そして、店長は本気でこの店を変えようとしているんだ、とルリは感じた。


店も21時を越えると混んできた。

とんでもなく全身ヒョウ柄を引き釣りながら歩く熟女がいた。


(あの人がサチさんが言ってた女帝?)


『店長、うちの隣のお客様についてるおばさん変えて、気に入らんわ』

関西弁で店長に言う。


『変えたら、他に着けるキャストが居ないよ』

『……そうね~この子でいいわ』

通りがかったルリの腕を掴む。

『ルリちゃんはダメだよ』

『なんで?』

『ルリちゃんは…他に…』

『じゃあ、うちの席に指名するわ』

『……仕方ないな……』


『じゃあ、行こか』

私の腕を引いて席へ行く女帝

『お待たせ、ちょっとおばさんそこどいて』

と女帝

ルリを紹介する。

『本田さん、ルリちゃんと番号交換して、同伴の約束忘れんといてな』

歳は48才くらいの品のいい男性だった。

「よろしくお願いいたします」

『こちらこそ、品のいい女性が来て良かった』

さっきまで隣にいた熟女がルリを睨み付け席を離れた。

女帝が少し不適な笑みをした気がした。


『ルリちゃん、明日の出勤前食事どう?』

「大丈夫です」

『じゃ、明日この店の前待ち合わせでいい?』

「はい」

『近くにいいレストランがあるんだ』

「はい」


翌日、早めに出勤し同伴とはどのくらいの時間にお店へ入ればいいか店長に聞いた。

出掛けに、『個室の場合は鍵を閉めない方がいいよ』

と店長にアドバイスを貰った。


本田さんが店前に迎えに来て、徒歩でレストランへ向かった。


ラブホテル街を通る。


不意に本田さんが私の腕を引きホテルへ連れ込もうとする。

「やめてください」

『いいじゃないか、ルリちゃん』

「やめてください」

『盛りのついた年頃だろ……』

「やめてください」


カシャカシャ……

『ルリちゃんの枕営業の証拠取っちゃった……隣のおじさんも写ってるけどどうする?』

お客様と同伴中のサチさんに出会す。


『やめろ、まだなにもしてない……削除しろ』

本田さんが言う。


『やだー、枕営業されてお店に来ないつもり?おじさん、最低。写真、会社に送っちゃおうかな~』

とサチさん。


『行くよ、行くから頼む消してくれ』

と本田さん。

『じゃ、ちゃんと来たのを店内で確認したら消してあげるね、じゃあね、盛りのついたお・じ・さ・ん』

と、サチさん。


『はぁーどうしよう』

と、本田さん。

「食事に行きません?」

ルリが言う。

『ああ、そうするよ』

と本田さん。


近くのイタリアンのお店に入る。

本田さんが話してくれた。


私をホテルに連れ込んで乱暴しろ、と女帝に頼まれたそうだ。女帝はいままでも自分の鼻につく女性はそうやってやめさせて来たのだそうだ。


本田さん達社員は部長が指名している女帝には逆らえないそうだ。



後ろの席で、奥さんとコース料理を食べていた男性が振り返り言う。


《まるで大奥だね……ハハハ》


『そうですね』

と本田さん


「……大奥」

ルリが呟く。


『ルリちゃん、お店に行こう』

と何か吹っ切れた様子の本田さん


「……ありがとうございます」



同伴する本田さんとルリ。

『いらっしゃいませ、本田様』

店長が案内する。

『店長……俺のような下の者の名前覚えててくれたんですね』

『本田様が初めてうちの店へ入らしたとのこと、鮮明に思いだされます。まだ入社したてで、お名刺を頂きました』

『店長、俺擦れちゃった……』

『まだ……大丈夫ですよ……』

と店長。

『ルリちゃん本当にごめんね、お詫びにワイン入れるよ』

「……そんな……」

イタリアンレストランで、さっきルリが白ワインを飲んでたのを見てワインが好きだと分かったようだ。

『今日は、ルリちゃんに話聞いてもらおうかな』

と、本田さん。

「私で良ければ」

ルリが笑顔で答える。

本田さんはルリと一緒にワインを2本空け、また来るよ、と言って帰っていった。


サチさんに御礼をいい、さっきの写真……と言うと、

『咄嗟にシャッター押したのでピントが合って無かったの~』と言われた。

本田さんはキャストの中では、すぐ連れ込む人と言われていて結構有名なのよ、とサチさんが教えてくれた。

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