第2話
もう陽が暮れた夕方18時……
「すみませんでした」
頭を下げて謝る瑠璃子
『あんた、私の目を見て謝んなさいよ』
会社のお局あすみ先輩が瑠璃子に怒鳴った。
「……すみませんでした」
ここは秘書課のオフィス……役員秘書の仕事をしている。
役員の秘書と言っても、気分屋、セクハラ、癖のある役員が多い。
役員の愛人のホステスの世話までさせられる者もいる。それがあすみ先輩だった。
そして、唯一まともな部長付きの瑠璃子に嫉妬し、ストレスを全部ぶつけ続けてきた。
みんなが見つめるが、怖くて誰も何も言えない。
『聞こえない、土下座しなさいよ……』
《やめなよ、あすみ……隣の部にも聞こえるよ》ゆり先輩の声……唯一あすみ先輩の同期
震え泣きながら出ていく瑠璃子…。
部長に電話する。
「部長すみません。急用が出来、私は今日は部長をご自宅までお送り出来なくなしました。退社時運転手の堀田さんに直接連絡して貰っても宜しいでしょうか?」
「いいですよ、何かあったのか?何か困ったことが起きたなら遠慮なく言いなさい」
と部長が言う。
「ありがとうございます、では今夜はお先に失礼させて頂きます」
堀田さんに電話する。
「堀田さん、今夜私はお先に退社させて頂きますので、部長を宜しくお願い致します」
『聞いたよ、瑠璃子ちゃん、またあすみに怒鳴られたんだって?』
堀田さんは同じ秘書課のみかと、交際している。
私が出ていった後みかが堀田さんへすぐ連絡したそうだ。
堀田さんがみかと交際していることを社内で知っているのは、部長と私と第一営業部のヒロトだけだった。
堀田さんはヒロトと同じ大学で同期で第一営業部に在籍する。
海外赴任から帰国し2ヶ月間の休暇を取っている。
その間自ら志願し部長の運転手をしている。何か考えての事だろうが、今月が2ヶ月目、来月からは営業部へ出社するそうだ。
将来の役員を約束された男だ。
そして、会社の2駅先の自宅まで歩いて帰る瑠璃子。
自宅マンションが見える。
『瑠璃ー。』
自宅マンションの前にヒロトが立っている。
「ヒロト……」
『おまえ、鞄置いたまま何も持たず会社出ただろ』
「……あっ、」
『みかちゃんが俺のところへ来て、瑠璃子が鞄置いたまま出ていって家に入れないだろうからお願いします、って持ってきてくれたんだよ』
『大丈夫か?』
「だいじょうぶ……」
『もう、会社辞めていいんだよ』
「…………」
「俺はもう瑠璃にプロポーズしてあるんだから、瑠璃さえ良ければいつでも入籍しよう」
「…………そうだね……」
虚ろな返事の瑠璃子。
『家に入ろうか』
私とヒロトは同棲して1年になる。
1年前、ヒロトは結婚しようと言ってくれたが、まだ仕事がしたかった私は、まだ仕事したいから、と答えた。
秘書課で働く社員は結婚すると退職する。
『瑠璃、いま仕事楽しい?』
「……正直ツラいかもしれない」
『あすみのパワハラは日々酷くなって来てるって、みかちゃんが言ってた』
「パワハラって言うか……」
『俺があすみに言ってやってもいいけど…』
「それはダメ」
『もう仕事辞めてもいいんじゃない?』
「そうだね」
『入籍しよう、俺が守るよ』
「……そうする」
そして瑠璃子は3か月後寿退社し結婚式を挙げた。
みんなに祝福された。
幸せだった。
だが、その後ヒロトは浮気し、地方へ飛ばされた。
それは、浮気相手の女性を叩いた事で発覚した。
結婚し、格が上がったヒロトは接待へ同行することが増えた。
そしてその浮気相手はOLでも、銀座のクラブのホステスでもなく
五反田の熟女キャバクラの熟女だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます