運命のいたずら
よく「この出会いは運命だ」とか言うけどそんなのは詭弁で、そんなものはないと僕は思っていた。しかしこの時ばかりは運命とやらを信じざるを得なかった。
高田 雫、は僕の家の隣で酒店を構えていた高田家の一人娘で僕とは同い年。小学5年生の時に転校するまで保育園からずっと一緒に育ってきたいわゆる幼なじみだった。当時は特別な感情は抱いていなかったが、6年ぶりに再会したその姿に一瞬で魅了された。
思わず見とれてぼーっと立ち呆けていると向こうも気づいたらしい。店を出て声をかけてきた。
「もしかして傑!?」
「…うん…久しぶり…帰ってきてたの?」
「前とは別のところに昨日ね」
にこやかにそう答える彼女に僕は本気で恋をした。
「この花火大会も懐かしいなぁ。よくみんなで来たよね」
家が隣だったこともあり家族ぐるみでの付き合いだった高田家とは、彼女たちが引っ越すまで二家族揃って花火を見に来ていた。
「傑、おばさんとおじさんは?」
「2人とも、仕事」
「そっか……じゃあ、2人で見る?」
「店は?…平気なの?」
「もう終わるから。ちょっと待ってて!」
前は普通に喋れていたのに、成長した姿を見た途端まともに喋れなくなった自分に嫌気がさしながら30分程待っていると、どこで着替えたのか、服装が高田酒店オリジナルTシャツから浴衣に変わっていた。そのあまりにも似合いすぎている浴衣姿にまた見とれた。
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