始まりの音

僕の中途半端は何も学力やスポーツ面だけではなく、クラス内での立場も例外ではなかった。中心にはいないが、隅にもいない。誰とも問題を起こすこともなく平穏な日々だった。



そんな日々が一転したのが、夏休みに入って2週間ほど経った日だった。その日は地元の花火大会の日で、地域住民は皆集まるのが慣習化していた。僕も一緒に見る人が居ないにも関わらず何となく会場へ足を運んだ。今思えば行かないという選択肢もあったが、物心着いた時から毎年行っているこの行事は行かないと落ち着かないようなところがあったのだろう。



花火は川沿いの土手で見るのがお決まりであり、川から200m程離れた神社から土手まで屋台がずらりと並んでいた。たこ焼き、焼きそば、射的、くじ引き。夏祭りなら必ずいるような屋台を横目に特に目的のない僕は土手へとスタスタと歩く。



あと20m程で土手という所で、ひとつの屋台が目についた。高田酒店たかだしゅてんと書かれた暖簾に胸騒ぎを覚え中を覗くと、小学校の時に突然転校した幼なじみの高田 しずくが店番をしていた。

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