第12話 鯉。それ、意味違くないですか?

 俺は美鈴が家に帰った後、直ぐに美鈴の両親にここがどこなのか教えてもらった後、四人と合流した。

 案外四人とは距離が近かったようで、迷うことなくスムーズに合流することに成功。


 その後俺たちは止む無くサバイバル生活を終え、何事もなく帰還することに成功。



「二度とやらねえこんなことー」


 桃太郎が机にグタッとしながら呟く。


 今日はサバイバル生活をし終え、みな教室に集まっていた。

 中にはもう服がボロボロになっていたり、居ないものも見える。


「今日くらい、もう帰らせてくれてもいいのにな」


 ノブナガがそう言うと、和人が腕を組んで悩む。


「確かにもう皆クタクタだよね。でもまだ12時だよ」


 サバイバル生活は三週間後の朝までで終わり。

 そのまま帰るのが生徒にとって一番幸せな事なのだろうが、そうはいかないらしい。


 そうして会話を弾ませていると直ぐに先生が教室に入ってくる。


「皆さんお疲れ様。今日は今から話をして終わりね」


 生徒から歓声の声が湧く。

 案外元気じゃねえか。


「怪我や体調不良なく、帰還できたグループは全体で九割を超えたわ。三週間という長い時間。よく頑張りました――」



「あっ! そういえばノブナガー?」

「何で疑問?」


 俺は次の日の朝、直ぐにノブナガのもとへ駆け寄り、とある報告をする。


「モリグラティスの実ってあるじゃん?」

「当たり前だろ?」

「あれの名前、本当にモリグラティスの実らしいぜ」

「うん」

「うん?」

「うん」

「驚かないの?」

「いや、知ってたぞ俺」

「マジか……」


 俺はこれを打ち明けることをかなり楽しみにしていた。

 知ってたなら教えてくれればいいのに……。


「ム、ムネト君……」


 横から美鈴の声が聞こえる。

 何だと隣を向くと、実乃が美鈴を押すようにして美鈴を差し出す。


「ん、くれるのか?」

「欲しいの?」

「うん」


 俺は差し出されたものを、何でも受け取ってしまうような体質なので念のためそう聞いてみることにしたが、やはりくれるそうだ。


「ありがと」

「ええええええ……?」


 困惑する美鈴に対して、若干の笑みを浮かべながら実乃は言う。


「まあ冗談はさておき……」

「冗談? どういうことだ?」


 そう言うと実乃は、思い出したように納得する。


「あー……そういえばお前そんなんだったよな」

「ありがとう」


 取り合えずお礼を言っておいた。


「……本当にこんなんで良いのか?」


 美鈴はそれを聞いてうんうんと頷く。


「えっと、ムネトさん。今度の日曜日、一緒にどこかいきませんか?」

「日曜日って何日後だ?」

「えっと、今日が金曜日なので、二日後かな……」

「いいよ」


 そう言うと美鈴ではなく、実乃が小さくガッツポーズをする。


「じゃあ細かい所はまた放課後ねー」


 またまた実乃ではなく美鈴が返事をする。

 まあどっちが返事しても同じか。



 その日の放課後、ノブナガがとある疑問を俺にぶつける。


「なあ、今日遊びに誘われたよな?」

「ああ。美鈴にね」

「それってデートってことだよな?」

「ん、どういうこと?」


 ノブナガが真剣そうな顔つきで俺を伺う。


「教えてやるよ……」

「おん」


 俺はゴクリと唾を飲み込む。


「美鈴は……ムネトを狙っている」

「ま、ま、マジかよ……」


 俺は鳥肌が止まらなくなった。











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