第9話 誰。サバイバル生活は過酷なようでした。

「お、あれ川だよな」

「川ですな」


 俺たちはノブナガ騒動が起きた後、直ぐに川を探しに急いだ。

 ノブナガのせいで俺の基本ステータスを言うを失ってしまった。しかし俺はステータスを覚えていないので、丁度良かったかもしれない。


 そして川を見つける。


「やったー! みんなありがとう!」


 実乃が一番に喜ぶ。そういえば、体を洗うために探してたんだったな。

 すっかり忘れていた。


「おうよ。じゃあ先どうぞ―」


 俺は一番風呂ならぬ一番川を実乃に譲る。


「本当にありがとう。じゃあお先です」


 俺たちは少し遠くまで離れる。


「見つかってよかったな」


 最初にノブナガが切り出す。


「そうだね。けど、ナガ君が織田信長だったことにビックリだよ」

「そうか」


 ノブナガは少し照れくさそうにそっぽを向く。


「俺は織田信長が有名人だったことにビックリだな」

「俺も聞いたことねえな」


 俺と桃太郎の意見が一致する。


「もしかして江戸より前に亡くなってた?」

「江戸?」

「んー。桃太郎君は知らなくて当然かな。多分亡くなってからノブ君が生まれている。ムネト君は?」

「俺は地球がぶっ壊れる最後まで生きてたっぽいぞ?」

「じゃあなんで織田信長を知らないんだろう……」


 和人が頭を抱える。


「単純にこいつば馬鹿ってだけじゃねえのか?」

「そう……なのかな」


 そして俺たちの他愛もない会話が続く。


「お待たせ―」


 15分ほどで実乃が帰ってきた。


「じゃあもう眠いし寝るか」

「え! 入らなくていいの?」

「うん。だって眠いし。この辺で寝ようぜ」

「そうだな」


 俺とノブナガはいつも通り地べたにゴロンとする。

 そして直ぐに眠りにつく。




「おーい! ムネト君! ノブナガ君!」


 俺たちの朝は早かった。


「って、まだ昼じゃねえかよ……」

「……ダメだよ、起きて! って昼じゃねえかよ?」


 そう言いながら和人は俺たちを無理やり起こす。


「ねむぃ」

「はぁ……昨日はあの後大変だったんだから……」


 実乃が眠そうに言う。


「なんかあったのか?」

「いや、そりゃー私も一応女子だしさ」

「え?」

「え?」

「何? 知らなかったの?」

「知ってたよ。うん」

「……」

「で、何があったんだ?」

「だから、私がどこで寝るかっていう事」

「そこで寝ればいいじゃねえか? もしかしてあれか?」

「……そうよ」

「自分のベッドじゃないと寝れないタイプ」

「違うね」

「……じゃあ何だ」

「……」

「まあいいじゃないか」


 横からこの会話を止めるように和人が入る。

 確かにどうでも良い話だ。


「まあそれはそうと、モリグラティスの実を食べに行くか」

「またあれかよー!」


 桃太郎が嫌そうに歩く。

 確かに何日も同じ食べ物は飽きる。


「あー。モリグラティスだわやっぱ」


 そう無心になりながら桃太郎が食べ進める。



 俺たちは朝ご飯と称し、モリグラティスの実を食べ終えると、次は何をやるんだと周囲の目がこちらに向けられる。


「いやーそんな目で見つめられてもなぁ」


 俺たちは食べる、寝るを繰り返していただけだ。特別何も変わったことはしていない。


「寝るか?」

「いやさっき起きたばっかだけど?」

「だって寝るしかやることないし」

「……」

「これをあと何週間もなんてやってられっかよぉ」


 桃太郎が後ろにバタンと倒れる。


「大丈夫だって、数週間なんてあっという間に終わるって!」

「ほんとかよ……」


 桃太郎に続き、和人もらしくない姿をさらけ出す。


「そういえばさ、もう一人日本人の子いたよな?」

「あー美鈴みれいちゃんね……」


 実乃が一番に反応する。

 何か知っている様子だ。


「何か、家柄的にあまりこれないみたい」

「家柄?」

「家族!」


 実乃が言い直すように言う。


「あー、家族ね」


 そういえば今気づいたんだが、俺たちの両親は今どうなっているのだろうか。すっかり忘れていた。


「かなりの過保護らしいの」

「なーるほどな」


 美鈴は基本ステータスに『誠』が付く大物になってしまった。そのため日本にとって欠かせない存在となった。

 けれどもそれは即ち戦わなければいけないということ。今はまだ平和と言えるが、いつ何時なんどき敵が襲ってくるか分からない。

 戦いに出ればケガだって、最悪の場合死んでしまう可能性だってある。そうなれば過保護になってしまうのも無理はない。


「はい、次ムネト君の番」


 基本ステータスの事を聞かれたと思ったが違う。


 そういえば順に川に入っていっている途中だった。

 別に俺は入らなくても良いんだがな。


「ういー」


 俺は一人でスタスタと歩く。


 川はここから数分。直ぐ近くだ。


 俺は川に着くなり、服を着たまま川に飛び込んだ。


「つ、冷てぇじゃねえかよ……」


 俺は基本ステータスを忘れたと言っても三誠であることに変わりはない。

 俺だってそれなりのらんが合ってもいいと思ったんだが……

 どうやら俺にはそんなものはないらしい。


 俺は顔に付いた水を払う。

 すると、川の向こう岸に誰か人がいる事に気づく。


「誰だ……あれ」


 俺は目を細めながら川を伝って向こう岸に渡る。


 すると、その人は俺を見るなり小さく声を上げる。


「ひゃっ……」

「……ん?」


 そこにいたのは日本人の女の子であった。






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