第二章 学校
第6話 初めての学校。俺は死にませんでした。
俺たちは信じられないくらいフカフカベッド……というか、以前は草むらで寝ていたから寝心地は最高だった。
「マジで最高だったな! あのベッド」
「そうだな」
俺と信長は今、朝ご飯を食べに向かう途中である。
「あ、ムネト君とナガ君。おはよう」
昨日俺たちを出迎えてくれた(多分違う)和人が声を掛けてきた。
「おはよう! あのベッドフカフカすぎてやべえわぁ」
「そうだね。確かにここのベッドは良いよねー」
「ほんと、マジで久ぶりに永眠できたわぁ」
「死んでるよね、それ……」
俺は和人と他愛もない会話をした後、直ぐに席に着く。
少し時間がたった後、食事が届く。
「モリグラティスの実……じゃないよな、そりゃ」
ノブナガがボソっと呟く。
確かにここ数か月、俺たちはモリグラティスの実しか食べてこなかった。
「これはハリウスの実だよ」
和人が自慢げに言うと、わざわざ一口で食べれるような実をフォークを使って口の中に運ぶ。
俺たちも真似してハリウスの実をフォークで口の中に運ぶ。
「こりゃあハリウスっていうか、リリオレンスな味だな」
そう俺が呟くとノブナガも続けて言う。
「んー。モリグラティスの実よりは、だいぶシッキングジャスリックが強いね。それと、口の中に広がるバイオリザッシュはかなりのノスタルジックだね」
「それ……どういう意味?」
「わからん」
まあ色々言ったが、要はモリグラティスの実とはまた違ったおいしさがあるという事だ。
「午前の授業から受けるんだっけ?」
「おう」
「はい、これ」
和人からとあるカードのようなものを受け取る。
「これなんだ?」
「名簿だよ」
そこに目を通すと、名前が40人ほどずらっと並んでいる。そこには
名前を見通すと、日本人はどうやら俺たち三人を含めて合計6人だった。あとはカタカナである。
「覚えた?」
「は?」
「だから全員の名前!」
「いや……無理っしょ」
「大丈夫だって三誠なんだし」
「無理です」
いくら三誠だからと言って一瞬にして40人ほどの名前を覚える事なんて不可能である。
「お! 覚えれるぞ、俺」
横からノブナガの声が聞こえる。
「うそ……」
「ほんとほんと! じゃあなんか問題出してみろよ!」
「いいぜ」
ノブナガがいつもより一回り高いテンションではしゃぐ。
俺は名簿を眺めて、一番名前が長い人を選ぶ。
「じゃあ出席番号8番!」
「ギルニーアセット・クロセスワール・ロジャークスギフティニー」
「何っ……」
確かに一文字も間違っていない……。
和人がだよねー。という顔ぶりでノブナガと意思疎通を交わす。
「お……俺だけ……覚えられない……」
「案外覚えてるかもよ?」
「か……な?」
俺はノブナガに問題を出してくれとジェスチャーを送り、紙を机に置く。
「出席番号8番は?」
あー。長い奴だ……何だっけ……。
「
「惜しい!」
ノブナガが名簿を見て言う。
「惜しい?……というか、何で最後年金保障制度なんだよ……」
「んー。やっぱ無理だな」
俺は開き直って椅子から立ち上がる。
「じゃあ皆でクラスに行こうか」
「もう空いているのか?」
「うん。空いてるよ」
「よし行くか」
俺たちは教室へ向かった。
ガラガラ――。
扉を開けると、どこか懐かしい雰囲気を感じ取れた。
そして入った途端、二人の男女が駆け寄ってくる。
「俺の名前は
桃太郎⁉
俺とノブナガは唖然とする。
「桃太郎って……あの犬の生地とザルで戦う?」
「犬と雉と猿だね」
俺はなるほどと手をグーにして手に打ち付ける。
「居たんだな」
「な」
「えっと、私の名前は
「おう、よろしく! 俺、ムネトと、こっちがノブ!」
「ナガの方ね!」
「あ、すまんすまん」
俺たちは軽い挨拶を交わして指定された席に座る。
間もなくすると、女の先生らしき人が入ってくる。
「では、授業を始めます――」
授業かぁ……あんまりいい思い出無いんだよなぁ
そう思いながらも、先生の声に耳を傾ける。
「えっと、今日は新しく新入りも入ったみたいだし、一から説明するわね」
先生がそう切り出す。
「私の名前はエリフ。一誠よ。今ここに集められているのはニ誠と三誠。私よりも年上の人だってこの場にいるかもしれないけれど、あまり気にしないでくれ。政府は基本ステータスを基準として様々な役割を与えた。主に下人は肉体労働、中人は商業、上人から人類の主力して戦ってもらう。一誠は一人ずつ特王に収集させられ、それぞれの役割についた。その一人が私という事だ。私の役割は情報の譲渡。そして教育。二誠と三誠は人類の中でも極めて重要な戦力と言える。だからこうして特別に授業をしているわけだ」
俺とノブナガはなるほどと首を縦に振る。しかし意味は半分、いやそれ以下しか伝わっていない。
「そして、この世界で最も注意しなければいけない事を話す。絶対に覚えておくように」
生徒たちはノートを取り出すわけでも、メモ帳を取り出すわけでもなく、教師を真剣に見つめる。
「草むらや地面に落ちている、指輪や首輪、又はネックレスなど、絶対に近づかないこと。あれは他の生物が張った罠だ。あれは強力な何かが封じ込められていて触れただけで死亡する。もう既に10000人以上がそれで亡くなっている。今その何かを研究しているんだが……なんて言ったって触れたら即死だ……もう一度言う。絶対に地面に落ちているアクセサリーに近づくな!」
あれ……俺の首輪って……。
俺は自分が付けている首輪を手でスリスリと撫でた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます