第4話 二人の終末。意外と裕福な暮らしをしてました。
あれから3か月が経った――。
3か月後、俺たち人類はわりと豊かな生活を送っていた。
第二の世界に進むにあたり、かなりな激戦区を人類は予知していた。しかしそんな考えとは裏腹に、特に別の生物と戦うこと、ましてや交流すら持たず、人類のみで生活していた。
第一の世界で食料にしていた、豚や牛、魚などの生物は一切いない。だがこの世界は、第一の世界ではなく、第二の世界である。どのようにでも応用が利く。
唯一の欠点があるとするならば、地位という事になるだろう。やむなく
そして世間は
あれ……俺が、
まあそんな疑問もあったが、今はそんなこと関係ない。
俺たち二人は、未だに野生感のある暮らしをしていた。
人類の輪には足を踏み入れていない。
「どうだ? そっちは」
「問題ない」
いつも通りあたりの偵察。
俺たちは好んで二人で生活をしている。
めんどくさそうな人間社会に入りたくないというのもあるが、今が楽しいのである。
もし、今人類に見つかってしまえば、無理やりでも輪の中に連れていかれる。
そんなもの真っ平ごめん。
「じゃあ、食べるか」
「ああ」
信長はモリグラティスの実が好きだ。
今でも毎日欠かさず食べている。
そしてそんな俺たちの裕福な暮らしを邪魔してくる奴がいる。
「よっ! 人間!」
「だからその呼び方やめろよなー」
彼の名前はビルク・フェイマスグリセリデット。長いから俺たちは名前からリデって呼んでいる。
毎度毎度突っかかってくるのは面倒極まりないが、頭も良いし、魔法……だったかな……とかも使えて、なんか凄い奴なのは俺にでもわかる。
「そういえばその首輪ずっとしてるよな、何なんだそれ?」
リデは俺の首輪をじろじろ見ながら不思議な目で見つめる。
「なんか落ちてたんだよなぁ。けど、案外似合ってるだろ?」
「まあそれはそうだな」
リデはその場に座る。
「何だよ」
「いや、別にー」
座った状態で俺を見つめる。
「そういえばリデって男なのか? 女なのか?」
俺はリデを見つめながら言う。
リデの髪の毛は男にしては長く、女にしては短い。あと髪の毛が手みたいに自由自在に動く。そんなことはどうでも良いのだが、信長と一度どっちなのか討論したことだってある。
この質問に対し信長も、俺によく言った! という合図を俺に向かってする。
「どっちでもねぇなー」
「そうなのか……」
「俺たちゲイマンは性別を持たないんだよー」
「あー人間じゃないんだな」
「って……知らないで接してたのかよー」
信長は詰まらなさそうに手をモリグラティスの実に運ぶ。
「性別持たないってなんかつまんなそうだな」
「そんなことないぜ」
「そうなのか」
というより人間じゃないことに驚きだ。確かに魔法が使えたり、宙に浮いたりできる点は人間とは変わっているが、本当にそれくらいである。それなのにも関わらず人間でないなんてビックリだ。
リデは信長が大事そうに抱えているモリグラティスの実を奪って口に入れると、直ぐに向こうの方に走っていく。
そして直ぐにこちらを向いて、手をバイバイと横に大きく振る。
「あー! くっそあの野郎!」
信長がリデを追いかける。がしかし直ぐにリデは空へ飛んで行ってしまった。
「絶対許さねえ」
そうぶつぶつと呟きながら戻ってくる。
「なあ信長? リデが人間じゃないならいずれ戦うってことだよな?」
「そうなるなー」
「なんかやだなぁ、あいつと戦うの」
「同感だ」
確かに鬱陶しい奴ではあるが、悪い奴ではない。多分……
「い、いたぞー!」
森の奥から人の声がする。
「な、なんだ!」
大人数で押し寄せてくる足跡に、俺たちは逃げる。
「あ、待って」
「何だよこんな時に!」
信長は少し戻って、モリグラティスの実を二粒、三粒と手に持つ。
「よし、OKだ」
「おう、行くぞ!」
俺たちは再び走る。
「あ、待って」
「何だ」
俺は大事な事を忘れていたと直ぐに戻る。
俺はモリグラティスの実を二粒、三粒と手に持つ。
「よし、行こう!」
信長は手をグ―のポーズをして俺に突き出す。
だが既に俺たちは大人数に囲まれていた。
「何故だ……何故……」
もちろん、モリグラティスの実を取っていたからである。
「糞ぉぉぉおお! 俺たちは終わりだあ!」
信長は俺の肩に手をポンと置く。
「今まで、よく頑張った……」
「うわあああああああああん」
俺は泣き出す。
それを見た信長も、声という声を出さずに泣き出す。
「もういいですかね……」
囲んできた男の一人が呟く。
「あ、はい。大丈夫です」
俺たちは直ぐに立ち上がって手を差し出した。
「何ですかこれ?」
男は俺たちに向かって不思議そうな顔を浮かべる。
「何ですって、手錠を……かけるんですよね……」
「なんで手錠?」
「え、俺たち捕まったんだよ……ね」
「いや、違うけど……」
俺と信長は顔を合わせる。
「あ、そっか」
どうやら俺たちは、逮捕されると勘違いしていたようだ。
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