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 暫く余韻に浸ってから、僕らは立ち上がる。

「明日の朝ごはん、何にする?」

妻が振り返って尋ねる。

「卵かけご飯」

「え?しばらくは卵なんて食べない、って言ってなかったっけ」

「食べないと前に進めない気がしたから」

「何それ」

妻は、海の彼方を見つめつつ微笑んだ。


 また二人の生活に戻る。

「ねえ、明日は浜辺のゴミ拾いでもしましょうよ。ウミガメは、ビニール袋を間違えて食べて死んじゃうこともあるらしいから」

「うん、そうだね」

そう言って、空き缶を拾う。


 僕らを幸せにしてくれたカメが、悲しむことのないように。

彼女の産んだ卵が、無事に孵って成長していけるように。

この海が、浜辺が、地球が、美しくなることを願う。

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祈り まき @maki_m

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