第2話 「出会い」
「あー、えーっと、まあお前らもなんとなく風の噂で聞いたと思うが去年からイギリスに留学しててこないだ帰ってきた桜井美咲(さくらいみさき)さんだ。今日からこのクラスで過ごすことになるのでよろしく。去年はほとんどこの学校には来てないから周りで気遣ってやって欲しい。ほい、桜井くん自己紹介しな」
「桜井美咲です。よろしくお願いします」
翌日、昨日悠真が言ってた帰国した留学生?が来た。自己紹介それだけかよ。
見た目的には黒髪ロングで身長は俺よりは低いけど普通の女子よりは高い、多分160セ?チ前半くらいで顔はカワイイ系と言うよりは美人系。
わかりやすいように言えばメガネこそかけていないもののやり手とか優等生とかそういう類の人。
クラスのやつらはかわい〜だの髪つやつやできれ〜だのクールでかっこいい〜だの色々言ってるが……。
でも、よろしくお願いしますだけって……。
まあ俺はそもそも関わるつもりは無いからいいけど。
「じゃあ席は1番後ろな。沢渡……あのうっすら茶髪の顔だけイケメンのやつの横で。沢渡ー!困ったことがあったら助けてやれよー!」
げ、俺の横かよ。ここ窓際で隣もいないから心地よかったのに……とりあえず抵抗してみるか。
「サポートするなら女子の方がいいと思いまーす」
「んあ?恥ずかしいのか?顔だけはイケメンなんだからそれくらいはエスコートしてやれよ。そもそも席が空いてねーんだからしょうがないだろ。ま、よろしく頼むぞー」
最悪だ……天国から地獄に落とされた気分……。
てか顔だけってとこ繰り返すな。中身も真っ当だわ。人間と関わりたくないことを除けば。
しかも俺が望んだ訳でもないのにクラスの男子共の嫉妬の視線が集まってくる。
その桜井は自分に集まる視線も俺に対する視線にも一切動じることなくつかつかと俺の隣の席にやってきて、
「桜井よ。よろしく」
とだけ言った。
「神ちゃんから名前は出たが沢渡だ。ある程度は助けられるけど多分女子の方が色々わかるだろうからそっちに是非とも聞いてくれ」
まあこれくらいでいいだろう。深くは関わられたくない。
「大丈夫よ。そもそも困らないし困っても自分でなんとかできるからいいわ。じゃあ」
と言ってシンプルな黒っぽい紺のブックカバーをつけた本を開いて読み始めた。
……。
は?
こいつ今なんて言った?せっかく俺が親切にしてやったというのになんだこいつは。
そもそもクラスに入って席に座ってすぐ自分の世界に入っちゃうってどうかしてるでしょ。
正直めちゃくちゃ腹が立つがこういう輩は聞く耳を持たないし関わらなきゃ済む話だ。
今は午前の授業が終わった昼休み。普通の公立高校であるこの高校には食堂とかいう洒落たものはないので普通に教室で弁当を食べる。
大抵はいつもの3人と机をくっつけたりはしないが固まって食べることが多く、いつも通り今日も4人で昼飯を食っていた。
このクラスに新しい人が来たとなれば話題になるのは当然で、
「おい和明、例の桜井ちゃんと隣ってのはどうよ」
開幕は翔太、続いて悠真も
「和明羨ましすぎて今にも殴りそうなんだが、どうだあの子可愛いよな……じゃなくて仲良くなったか?」
2人して聞いてくるんだけど。
はぁ……。そもそも女嫌いで人間不信な俺がよりによって俺並みかそれ以上に人と関わる気がなくてとっつきにくい奴とどうやったら仲良くなると思うのか。
「なんもねーよ。俺そもそも人と関わりたくない人だし、それが女なら尚更な。向こうも最初に話したときから迷惑そうだったしそれからは一言も喋ってねーよ」
ちらっとあいつの席の方を見ると机をクラスメイトに囲まれていた。
転校生とかにあるあるなやつだけど、やはりあいつは素っ気なく対応していた。
「あ、ほんとだ。色々聞かれてるのにめっちゃ塩対応。あれは相当な人嫌いだね。和明以上じゃないか?」
「うわ、ほんとじゃん。せっかく同じクラスだしなんとかよろしくしたいと思ってたのに……」
「翔太、天は俺らになぜ彼女を与えてくれないのか……」
あ、また始まった、この2人。
それはともかく仲良くなんて出来るわけないのがお分かり頂けたのは何よりだ。
すると智が
「逆に和明なんかは仲良くなれそうなもんだけどな、人間嫌いなやつ同士で」
などとのたまい、悠真と翔太も
「あーそれは何となくわからんでもないな。同じ経験とか同じ考えの人とはやっぱ仲良くなれるからな」
「う、またかよ……。また俺らが仲良くなろうとした女子を和明が持っていく……」
3人とも何をおっしゃってるのか俺には到底理解できない。
まず仲良くなるどころか関わるつもりさえないんだけど。
あと翔太最後のはただのこじつけじゃね。
「そんな訳ないだろ。まずお互いのことを知るようになるほど関わるつもりもないしあいつも同じだろ。人間嫌いってのはそう簡単に治るものじゃないし同族嫌悪ってやつもあるから」
そんなことを話していたらふと、桜井と目が合った、と思ったのも一瞬で、キッと睨んだかと思うとすぐに目線を逸らした。
うわ、今の聞かれた?って言ってもそんな悪口言ってた訳でもないしな。
なんもしてないのに俺めちゃくちゃ嫌われてんじゃん……。
そしてふとこう漏らした
「俺やっぱあいつとは仲良くなれる気がしないわ……」
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