第1話 「聞く」
学校、というのは学問を学ぶために存在し、その学びをその後の人生で活かせるようにという趣旨で作られたのは間違いない。
でも、実際勉強だけをしに来ているような人はほぼ0人であるというのもまた間違いではないだろう。
そんな場所であるから当然嬉しいことや悲しいこと、楽しいことやうんざりすることだってある。
何が言いたいかって?
(もうラブレターが下駄箱に入ってるのはうんざりなんだよーー!!!)
そういうことだ。
「おはよう。なんで朝っぱらからため息なんかついてんだ……って、うわ、和明(やすあき)お前またラブレター入ってたの?」
「おはよ、そろそろ一切関わりのない人からの告白をOKするわけないってわかって欲しいんだけど」
こいつは清水翔太(しみずしょうた)、俺の3人の心を開ける友人の1人だ。
一応高校ではそれなりに硬派で通ってるからこんなこと言ってみたりもするが中学時代はOKしてたこともあるから知ってる人に知られたら怪訝な顔されるだろうな。
「そりゃそうだよな。顔面だけ見て好きですって言われても、あ、はいそうですかってなるのが精々だ」
「だろ?しかも手紙ってことは知らない人確定演出だ。憂鬱にならないわけが無い」
そう、これが憂鬱になる最大の要因だ。
俺は告白という行為自体は嫌いではない。
大人になればそんなことはすっ飛ばして付き合うことになるしもっと深い関係を持つことだってあるだろうし青春の甘酸っぱい1つのイベントだと思うから。
ただそれが初対面の人であれば別で、名前は知りません、話すどころか顔は見た事ありませんみたいな人から告白されても、顔面だけが好きですって言われてるのと同じだし、ひたすら困惑するだけで断って空気も今後の関係も悪くなるだけの無意味な行為でしかない。
そして、ある程度話したことがあるなら人伝に呼び出すことが可能で、もっと仲が良ければLime(メッセージアプリ)で呼び出せるしなんならチャットで告白することだってできるだろう。
つまり俺からしたらラブレターというのは接点のない人が呼び出すためだけに使われるものであってはっきり言って憂鬱の原因にしかならないのである……。
「まあ俺みたいな大概の男なら死ぬほど嬉しいがな。1回喜んで、でも罰ゲームかなとかイタズラかなって思うけどやっぱ最終的には嬉しくて飛び跳ねると思う」
「そんないいもんじゃねーよ。仮に超絶美少女が来たとしたって長くて半年経たずにポイだ。そんな付き合いになんの価値があるのやら」
「いやいや、外からずっと見てるだけだったのに勇気出してくれたんだなとか思うだけで嬉しいじゃん?」
「そう思ってるうちが華だよ。なんも知らないまま付き合ったって中身の無い恋愛にしかならない」
過去11回のうち最短4日最長5ヶ月半の俺からすればあれは恋愛じゃない。恋愛ごっこだ。
みんなの人気者を自分のものだけにしたい、自分のものにしたら自分の好きなようにしようとして出来なくて冷めるか、そもそも付き合うことが目的で付き合った時点で用済みなんてこともある。そんな関係はもうこりごりだ。
「おはー」
「おはよー」
教室に入ると友人3人組の残り2人、先に言った
方が小鳥遊悠真(たかなしゆうま)で後に言った方が山本智(やまもとさとし)だ。
こいつらも翔太同様に気を許せるような関係を築けている数少ない友人の1人だ。
3人だけとはいえ誰もが自分のことしか考えていなかったやつしか周りにいなかった中学時代からしたら大きな進歩と言っていい。
「そういやさ、明日去年から留学行ってた一個上の先輩が帰ってきてうちのクラスに来るらしいって聞いたんだけど」
ん?どういうことだってばよ?
「先輩なのにうちのクラスってどういうこと?」
「うちの学校普通に公立だから海外の提携校とかなくて留学すると単位取れなくて普通に留年するらしい。だから一個上だけど同じクラスになるって寸法だ」
なるほどな。いやそれなら4月から帰ってきたらちょうど良かったのでは……??まあいいかそんなことは俺の知ったこっちゃない。
「で、悠真。その噂の先輩とやらは女の子なのかね……?」
「翔太初っ端からそれかよ。まあ聞いた話によるとそうらしい。顔とか名前とかまでは聞いてないんだけど」
女かよ。女は大概ろくな奴が居ない。まあどうせ関わるつもりは無い。どうでもいい。
「うお、マジかよ!テンション上がるわ。な、智!」
「いや、俺彼女いるしあんま興味ないんだけど」
「う、裏切り者め……。爆発すればいいのに」
「俺は普通に嬉しいからその怖い顔はやめろ。他のやつに見られてんぞ」
「うっ……ありがとう同志翔太よ」
「あーい。ST始めんぞー」
担任が入ってきた。STというのはショートタイム、と言うやつらしい。まあ朝の会的なやつだ。ちなみに世間でHR(ホームルーム)と呼ばれるやつはうちではLT(ロングタイム)と呼ばれる。
こんな感じでまた一日普通の学校生活が始まる。
◇◆◇◆
作者より読んでくれた皆様へ
プロローグは短かったんですけど本編は基本的に2000~3000字を目安に書いていこうと思っています。
回によっては長かったり短かったりすることもありますが御容赦頂けたら幸いです。
更新速度は完全不定期ですが当分は毎日更新を目指して頑張りますので応援よろしくお願いします。
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