【毎日18:00更新】人生の勝ち組は新しい人生を歩みたい

naka

プロローグ 「勝ち組」

「好きです。付き合ってください」



「ごめん。俺今誰とも付き合う気ないから」



ここ屋上で繰り広げられているのは、よくあるようなあまりないような、そんなベタな告白。

梅雨前の晴れた空をバックに繰り広げられる瑞々しい青春の1ページだ。

しかしその当事者であるはずが、告白されている男は笑顔さえ浮かべていない。


理由は単純。

先程も述べた通り今はまだ梅雨入り前。

それなのに彼は既に4月から40回以上も告白されているのだから、全て断る彼の心労も推して測るべきである。


ここまで聞くと誰もがこう考えることだろう。

彼は一体何者なのか。



彼は若干15歳にして過去の交際人数は11人、高校入学前から数えればゆうに100を超える数の告白を受けてきた俗に言う


''モテ男''


と呼ばれる人種だ。


高身長に小顔で整ったパーツ、色素が抜けて茶髪ががった髪の毛まで含めて全てが人を惹きつける。

その上に人当たりがよく、スポーツではどの競技でも華やかなプレーで人を魅了する、そんな「人生の勝ち組」であった。


しかし、これまでの彼の人生が彼にとって幸せであったか、と言われればそれは否だと答えざるを得ない。


先程の告白でもその一端が垣間見えたと思う。

「勝ち組」な彼の周りには当然のように女子生徒がついてまわり、それを見た男子は少しでも女子生徒と喋るために彼の近くにいようとする。

必然だったのだろう。

全てが打算的で、目的を達成するためだけの人間が集まることになってしまったのだった。

結局、その人間関係は彼に歪んだ価値観と他人に対する不信感を与えた。


加えて11度の交際経験のうち2ヶ月以上続いたのですら2度のみという苦い経験があった。


容姿だけを見て交際を始め最終的に性格が合わず破局はざら。

相手から告白してきたのにも関わらず、彼のことを手に入れた途端に飽きてしまって直ぐに別れを告げられる、といったことまであった。


だから彼はそんな人間関係を変えるべく、実家からでは到底通えないような都市部の学校に進学した。

そこでは軽い恋愛はしない、もっといえば女子生徒とは基本的に関わらないと心に誓って。

その甲斐あってか実際に気心知れた友人も3人ではあったが作ることが出来、中学時代よりは幾分マシな学校生活を送っていた。


しかし中身が変わっても容姿だけは変えられないのである。

冒頭にあるような告白を受けることもしばしばあり、他者から注目を受ける存在であることに変わりはなかった。

それ故に打算的な人間が寄ってくることも少なくはなかったが、今は何とかはねのけている、といった状況であった。


それでも彼は信じた。

自分だって真っ当な人間関係が築けると。

そして彼は決めた。

新しい人生を歩むと。





───これはそんな彼の新しい人生を描いた物語である。




◇◆◇◆

8/10

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8/14

表現を変更するための中規模の改稿

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