番外 攻略対象者達側の事情

 私は侯爵令息であり、3歳年下の婚約者がいる。私が現在王立学園の3年生なので、来年になったら入学する予定である。婚約者である彼女は、幼い時に私の悩みを唯一理解してくれた、私にとっては大事な理解者でもある。その為、彼女との婚約は私が望んだことでもあり、彼女は同じく侯爵家のご令嬢でもあったから、私の両親も喜んで賛成してくれている。そして、彼女も私との婚約を望んでくれて、私には彼女以外の女性は、例えどんなに魅力のある女性だろうと、興味はなかった。


それなのに、今年入学して来たばかりのアレンシア・モートンは、私が片思いしている年上の婚約者が居るなどと、その婚約者が別の人物に夢中などと、告げて来る。私には年下の婚約者が居ると告げれば、それはおかしいと訳が分からないことを言ってくる。アレンシア・モートンは、頭がイカれているのか…。現実を否定し、自分の妄想を押し付けて来る。


抑々、私には一度も年上の婚約者など居るどころか、そういう話もなかったのだ。

なのに…その実存しない婚約者が、別の人物を好きだとしても何も問題がない。

その筈なのだが。アレンシア・モートンは納得しなかった。「あなたにはなのよ。私しか、貴方の悩みは分かってあげられないのよ。」と言って。

いや、もう僕には悩みがない。抑々、私の悩みは婚約者の彼女が解決してくれた。

だからもう…悩みはないし、私の悩みがきちんと理解出来るのは、アレンシア・モートンではなく、私の婚約者である彼女だけである。


あろうことか、私がアレンシア・モートンを好きになるとでも、思っていたようだった。何故…あんな娘を、好きになるんだ?…彼女とアレンシア・モートンとは全然違う。彼女は本当に私のことを、心の底から心配してくれている。けれども、アレンシア・モートンはよこしまな気持ちからだと分かる。その証拠に、私だけにではなく、他の男子生徒達にも媚を売っている。こんな女は信用出来る訳がない。


私は完全無視をし続けた。その結果、アレンシア・モートンは私を諦め、ハイリッシュ・キャスパーと婚約をしようと目論んだようだ。ハイリッシュは前から馬鹿だとは思っていたが、本当の愚か者だったらしい。自分の婚約者を婚約破棄してまで入れ込んでいたのだが、案の定、王家の人間まで敵に回したようである。2人は、舞台の上から消えて行った。アレンシア・モートンに騙され掛かっていた伯爵令息と男爵令息は、助かったな。あの2人は、だろうしな…。






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 俺は、王立学園の2年生である伯爵令息だ。俺には幼馴染であり、婚約者でもある同級生が居る。彼女とは幼い時からの付き合いであるから、仲が良い方である。

俺は嫡男ではないので、家は長男である兄が継ぐことになるだろう。だから、将来は騎士になるつもりで、幼いことから厳しい訓練を受けて来た。それなりに素質はあると言われているのだが、騎士になることに不安がなかった訳ではない。


そういう時に、彼女…アレンシアと、この学園で出会ったのだ。彼女に励まされたりして、俺は彼女に惹かれていった。婚約者とは幼馴染でもあったけど、姉のような妹のような存在だと思っていたから、悩みを打ち明けることが出来なかった。

要するに、婚約者にのだ。俺は、意地を張っていたのかもしれない。そこに彼女は、上手く入って来たのだ。だけど、彼女がハイリッシュと共に、婚約破棄事件を起こした時、俺は…やっと目が覚めた。そうか。彼女は少しでも上位の貴族令息と、恋仲になりたかったのか、と。


今は、婚約者と仲直り中である。やっと婚約者に、今までの自分の気持ちを打ち明けたら、「…馬鹿ね。そんなことで、嫌いになったりしませんわよ。」と、言われてしまった。それよりも早く打ち明けなかったことに、信じてくれなかったと、怒られたぐらいだ。…ああ、そうか。俺は、婚約者に嫌われたくなかったんだな。

俺はそんな弱みに付け入ったアレンシアに、のだと。


漸く…気が付いたのである。それでも…。アレンシア、君のお陰で漸く自分の気持ちに気付けたよ、ありがとう。そう…彼女には感謝しているんだよ。






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 僕は男爵令息であり、アレンシアとは同じ学年である。僕の家は貧乏過ぎて、まだ僕には婚約者が決まっていない。僕は一生1人なのだと思っていたから、あんな可愛い女の子から声を掛けられて、有頂天になっていた。僕のことも分かってくれて、貧乏なことも気にしないと言ってくれる彼女に、夢中になって行く。


しかし、この幸せは長くは続かなかった。彼女は、僕以外の他の令息とも仲良くしていたのだ。それでも、まだ彼女を信じたかったのだ。僕に気安く接してくれたのは、彼女が初めてで、彼女だけだったから。けれど、彼女はキャスパー公爵子息を選んだ。その後、2人は…罰を与えられることになったけど、2人は愛を貫いたのだから、僕は心から羨ましいと思っていたぐらいだった。


 「馬鹿ね。貴方は騙されていたのよ!…あの噂の2人に、じゃない。本当に愛があったのなら、貴族のしきたりを守った筈よ。愛がないからと言って、婚約者を無碍にするなんて、貴族のやることではないわ。私は貴族でないけど、それでも…貴族のことを、よく理解しているつもりよ。」


そう僕に言ってくるのは、商家の娘である僕より2つ年下の少女だ。彼女は貴族ではないので、14歳になっても王立学園には通えない。僕の家は、彼女の家の援助を受けていて、彼女とは幼馴染のようなものである。僕は…この年下の少女に慰められるのか…。情けないな…。


 「それにね、貴方には私が居るわ!…私が…貴方のことも、貴方の家も助けてあげるわ!」


彼女はモジモジしながらも、はっきりとそう言って来た。僕は彼女の言葉の意味に気が付いて、目を見開いた。いつから…彼女は、のだろう?

僕は…本当に情けない男だな。年下の女の子に、こんな言葉を言わせるなんて。

これからは、この少女を僕が守ろう、と決意した瞬間であった。






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 私は、この王立学園の教師である。年齢は20歳になったばかりだ。この王立学園を卒業して直ぐに、ここの教師になっていた。婚約者は、この学園に通っている生徒なのだが、誰なのかは内密にしている。彼女の卒業を待って、婚姻することになっており、彼女のことは、また相手が彼女で良かったと思っているぐらい、私は彼女を溺愛しているのだ。


今年入学して来た生徒であるアレンシア・モートンは、おかしな生徒である。

課題として出した問題を遣って来なかったり、婚約者の居る貴族令息と戯れて問題を起こしたり、将又、教師である私に媚を売って来たりと、理解の出来ない行動ばかり起こしているのだ。彼女は下町育ちだと聞いているが、少なくとも何年か前に子爵家に引き取られている。それにも拘らず、この礼儀作法は何なのだろうか?

未だに…庶民感覚が抜けないのか?…だとするならば、貴族としては致命的な問題であろうな。彼女は…貴族令嬢には向いていない。このままでは、高位貴族の家どころか、貴族全般から嫁ぎ先は見つからないだろうに。


彼女の父親は、商売をしているようだから、彼女はきっとその後を継ぐことになるのだろうと、私は軽く考えていた。まさか、彼女が高位貴族に嫁ぐことを狙っていたとは。あの婚約破棄は、有り得ない。貴族として、恥じるべき行為であろうに。彼女に篭絡されていたのは、ハイリッシュだけではないと聞いている。

ハイリッシュは公爵令息であり、またその婚約者が王家の流れを汲む侯爵令嬢で、一大事になったのだが、相手が男爵令息ぐらいなら…問題なかったのに。


彼女は、突然貴族の令嬢になれて、調子に乗っていたのだろうな。身の程を弁えていれば、過ごせただろうに。本当に、愚かなことをしたものだ。







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 私は、この王立学園の理事長である。実は…私の正体は、現国王の王弟という立場でもあったりする。私の母は側室に当たる人物であり、私の立場は極めて微妙である。然も私は、この国の王族特有の銀髪に青い瞳という、一目で王族と分かる姿をしている。学園の理事として姿を現わせば、私に初めて会う人物だろうと、一目で王弟だと見抜かれてしまうだろう。だから、理事長として堂々と姿を現すことも出来ない。どうしても表舞台に出なくてはならない時は、常に鬘を被り仮面を被って、を隠して来た。


ある時、現国王の第一王子であり、私の甥でもあるライトから呼び出しを受けた。

急用とのことで、何だろうと思っていたのだが、暫く学園には理事長として顔を出すなと言われたのである。何でも…私を狙っている女子生徒が居ると言う。

正直言って…訳が分からないのだが。兎に角、妄想癖の激しい貴族令嬢らしく、常識が通用しない。貴族令嬢なのに、そんな女性が居るのかと思っていたが、私もこそっと覗き見して、あれは危険な類だと思う。


王太子も狙っているとは聞いていたが、私なりに間者を使って調べてみると、どうやら…本当に狙っているようだ。本当に頭がイカれている。私も一切の関りを持たない為に、彼女が例の問題を起こすまでは、理事の仕事も指示を与えて代理に任せて、王城へも出向かないようにした。そうして彼女が学園を退学させられた今は、私も以前と変わらぬ生活を送れるようになり、ホッとしている。


しかし、実は…私は今年25歳となり、一応は既婚者でもある。色々と複雑な事情もあって、公表はされていないのだが、正妻は元高位貴族令嬢でもあるのだ。

狙われても…彼女の身分では、私の愛人にしかなれないだろう。

一体彼女は…何を考えていたのだろうか?…未だに…理解出来ていない私である。





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 ここから終了までは、番外編となります。

乙女ゲーム攻略対象である、ハイリッシュと王太子を覗く、男性5人のお話です。

第三者視点では、名前が決まられていない為に表現が困るので、敢えて本人視点での語りとしました。内容は、攻略対象者達の言い分です。


5人と婚約者(妻)含め、全員の名前がついていません。もし、今後続編の機会でもあれば、その時は名前を決めるかと思いますが、今回は名無しとさせていただきます。


※次回も番外編の予定です。あと数回で、このお話は完全に終了となります。

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