未来視の魔王と最強の勇者
@kurikinton0616
第1話 重なる未来と揺れる未来
「まもなくだ…まもなく人類は完全に死に絶え、この私がこの星で唯一の支配者となる!」
と、魔王サタンは全世界へと聞こえるほど大きな笑い声と共に、地球全土に向けて宣言した。
4人の勇者以外の人類が死に絶えた星に対するその宣言はとても大きなものであった。人間側が勝利しようともはや人類の滅亡は避けられなかった。
「これで、私は地球の王だ… 楽勝の事だったな なにせ人間の大半は、3000年前に自分たちとの戦争の果てに地球を汚染し、死に絶えた… しぶとく生き永らえた人間どもも私の前にこの椅子に座った者たちの手によって…」
そう呟きながら椅子のひじ掛けの先を撫でた。
「そして、私が決定打を与えた」
「これで、人類は終わる この魔王城を勇者の墓標にしてくれる!人の身に余る名誉である!」
再び、魔王はそう叫ぶと立ち上がり勇者一行との最後の戦いへと向かおうとした。
しかし、魔王の体に戦慄が走った
(これはなんだ? この感覚は過去になにかが 勇者よりもおぞましい存在が生まれたような感覚だ… ありえん!!! 人間に過去に戻る手段などないはずだ!)
魔王の視界が大きく揺らいだ まるで巨大な隕石が直撃したかのように…
「なんだこれは 体が消える! 私は! 私は!!! 6代目魔王にして最強の魔王サタンであるぞ! その私を脅かそうなどと…!」
魔王の体が砂のように朽ちてゆき、それを見ていたものがいた。魔王には気配を感じることが出来た。
魔王は朽ち果て、落ちた眼球をやっとのことで拾い上げ、その気配の方向をにらみつけた。
「あんたが、元の歴史の魔王か? 眉間に皺が寄っているのを見るとよ だが、目玉がはまってないし、手のひらの上に目玉置いてるとこっちに差し出してるみたいだぜ?」
そういうと、その男はこちらへと近寄ってきた。
「貴様は、人間か!? 馬鹿な!! 私が見落とすことなど!!!」
魔王は肉体の80%が砂となりながらも、それを感じさせぬ声をあげた。
「どこであろうと、お見通しの千里眼だろう? だが、未来を見通すわけじゃない、まして過去を見ることもできやしないんだろう? 俺の不戦勝になるわけだが、まあ既に過去のあんたには勝ってるからな もう戦う必要もない」
男は、魔王の砂となった体を救い上げながらそう言った。
「過去だと!? さっきの悪寒は! つまり!」
「そういうことだ 魔王も過去改変には勝てないってことだな」
「馬鹿な… 人には、過去に戻る力などぉ…」
魔王はそれ以上を言うことは叶わなかった。
体は砂となり、消え果てた
「人間には過去は変えられないさ、だが未来は変えられるんだ」
そういうと、その男は別の未来では魔王城と呼ばれていた城の椅子に座った。
未来視の魔王と最強の勇者 @kurikinton0616
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