第308話 ライネリア
「早い再会になったね、バレット・アルバース」
ラウルやみんなを苦しめていたのは――《この世界を知る者》だった。
……こうして、真正面から素顔は初めて見るな。
「そんな顔をしていたのか……」
「どう? 意外だった?」
「いろんな意味で、な」
確かに、意外だ。
もっとこう……全身から負のオーラみたいなのが発せられているような印象を抱いていたのだが、その素顔は至って普通の女の子だったのだ。
美しく長い水色の髪。
それから切れ長の目。
身長はティーテと同じくらいで、どちらかというと小柄で細身。
正直言って、今のような惨状を生みだしているのが彼女だとは到底思えなかった。
そもそも、彼女は原作に登場するのか?
少なくとも、書籍化が告知された時に発表されたキャラクターデザインの中に彼女の姿はなかった。ということは、主要登場人物の中にはいない――そもそも、ビジュアルが表に出ているキャラとは全員顔見知りだから、気づかないはずがないのだ。
「改めて聞くが……君は何者なんだ?」
率直な疑問が口をつく。
《この世界を知る者》――その本当の名前を俺は知りたかった。
そして、なぜこのような行為に及ぶのか……その真相についても、たどり着きたかった。
――彼女は、
「私の名前は……ライネリア」
少しためらいを見せつつも、そう名乗った。
……が、その名前に聞き覚えはない。原作未登場キャラなのか、俺がこちらに来た後の話で登場したキャラのどちらかだろう。
となれば、後付けの設定でバレット・アルバースと何かしらのかかわりを持っていたとも想定できるな。
「ライネリア……君の目的は何なんだ?」
「私の目的? そうね……この世界を破壊すること、かしら?」
「なっ!?」
随分と物騒なワードが出てきたな。
しかし、おかげで彼女の立ち位置が何となく理解できた。これはまだ仮説にすぎないが、先ほどの強大な魔力と合わせると、かなり信憑性が高い。
「少し、場所を変えましょうか」
「えっ?」
突然、ライネリアがそんなことを口走る――と、次の瞬間、周囲の風景が一変した。
「っ!? ど、どこなんだ、ここは!?」
全体が薄紫色のオーラで包まれたような、不思議な空間。
夢か現実か……その境界が曖昧になっているような感覚に陥る。
俺が見ているこの光景は現実のものなのか。
それとも、ライネリアの見せる幻なのか。
「そ、そうだ! ライネリアは!」
ここでようやく、ライネリアの姿が消えているのに気づく。
俺をこんな訳の分からない世界へ放り込んでおいて、本人がいないなんて。
「そんなに慌てなくても……私ならここにいるよ?」
背後から声がして、すぐに振り返る。
そこには静かにライネリアの姿があった。
「ここなら誰にも邪魔されずに話ができるね」
「話だと?」
「そう……あなた、薄々私の正体に気づいているんじゃない?」
「っ!?」
まるでこちらの心を見透かしているような発言。
……だが、今の言葉で確信に至る。
《この世界を知る者》――ライネリア――その正体が!
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