第307話 衝撃の光景
俺の目に飛び込んできた光景――それはあまりにも衝撃的なものだった。
まず、人物がふたりいる。
そのうちのひとりは……ラウルだった。
いつも明るく前向きなラウルだが、今は苦悶の表情を浮かべている。
無理もない。
彼は今、拘束魔法によって体の自由を奪われていた。額、腕、足――至るところから出血しており、今にも死にそうなほど顔色が優れなかった。
さらに、そんなラウルの周りには人が倒れている。
よく目を凝らして見てみると……倒れているのは学園生徒会及び騎士団の仲間たち。
その中には当然――ティーテの姿もあった。
「ティーテ!? ラウル!? みんな!?」
たまらず、俺は叫んだ。
すると、ふたりの視線がこちらへと向けられる。
ふたり……そうだ。
この場にはもうひとりいたんだ。
そいつは祭服のようなデザインをした服を身にまとい、全身から禍々しいまでの魔力を放っている。……さっき感じたのは、こいつの魔力だったのか。
「あれぇ? 変だなぁ? もう戻ってきちゃったの?」
祭服をまとう人物と目が合う。
その正体は、俺たちとそれほど変わらない年齢の少女。
……見覚えはない。
原作である【最弱聖剣士の成り上がり】にも、このようなキャラクターは登場していなかった。もしかしたら、俺がこの世界にいる間に更新された話に出てくる新キャラか?
もしそうなら、対処は慎重に行う必要がある。
――だが、今の俺は冷静さを欠いていた。
「おまえええええええええええええっ!」
一気に頭へ血が上り、俺は聖剣の力を全開放して斬りかかる。
「君らしくないなぁ」
少女は不敵な笑みを浮かべながら俺の攻撃を回避――しただけでなく、聖剣にも匹敵する強大な魔力を炎に変えて俺にぶつける。
「ぐっ!?」
まるで鞭のようにしなる炎を聖剣で斬りはらう。あれほどの短時間でここまで自在に魔力を操れるとは……って、感心している場合じゃない。
「どうだい? こんな展開は初めてだろう?」
ニタニタとこちらの神経を逆なでするような笑い。
小馬鹿にされているようで癪に障るな。
――待て。
落ち着け。
こんな乱れた呼吸のままではまともに勝負できない。ティーテや仲間たちを傷つけられたことで頭に血も上っていたというのもあるが、今のままでは冷静な判断もできないし、ヤツの思う壺だ。
俺は短めの深呼吸を挟み、再び聖剣を構える。
「おや? 立て直したみたいだね。こっちでの経験が生きているようで何よりだよ」
「経験だと?」
……こいつ、さっきからチョイチョイ俺のことを知っているような口ぶりだな。とすると、原作バレットの関係者?
しかし、共有されている記憶の中に、この少女の顔はなかった。女好きの原作バレットならば忘れるはずがないのだが。
「おまえは一体……何者だ?」
純粋な質問が、口から溢れ出る。
それを耳にした少女は一瞬キョトンとした表情を浮かべるも、すぐにクスクスと笑いだした。
「分からない? ――私だよ」
最初は何のことかと思ったが……そうだ。この声だ。
「まさか……おまえは……」
《この世界を知る者》――なのか?
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