第301話 黒幕登場?
魔剣に操られているのか?
マルゼは支離滅裂なことを話し始めた。
「俺に歯向かうって……どういう意味だ?」
「そのままの意味だ。話に聞くバレット・アルバースならば、こちらの誘いに乗ってくると思っていたのに」
「誘い? なんのことだ?」
「憶えていないとは言わせないぞ――君が学園に入学前に接触した際のことを」
どういうことだ?
俺は――いや、バレット・アルバースは学園入学前にマルゼと会っていたってことなのか?
しかし、そのような描写は原作になかった。
それに彼の口ぶりからして……ふたりが会って話していた内容は、あまり大っぴらにできないものだったらしい。でなくちゃ、マルゼが発覚した段階で即国際問題に発展するようなマネをするはずがないのだ。
……不思議なのは、記憶を共有しているはずなのに俺が憶えていないという点。
これまで、ティーテや学園にかかわることなどは漏れなく記憶の共有ができていたと思うのだが、マルゼの件については欠片さえ残っていない。可能性があるとすれば、記憶にとどめておくほどのものではないと判断し、忘れていたというくらいか。
だが、向こうはそうでないようだ。
「君とならうまくやっていけると思ったんだけどなぁ……」
あの邪悪なマルゼの笑み……ダメだ。あれは確実に悪事の片棒を担がせようって魂胆だ。
「悪いが、俺は君と手を結ぶつもりはない」
「……やはり、貴様だけは許せん!」
マルゼの持つ魔剣に、再び魔力が集まる。
恐らく、ヤツはブランシャルとサレンシアの国家間で戦争を起こすため、俺に協力を要請したのだろう。
あの頃のバレットがどんな返事をしたかは記憶にないが……彼の反応を見る限り、協力を匂わせるようなことを言ったんだろうな。どこまで当時のバレットが本気だったか定かではないが、少なくとも今のバレット――つまり、俺はそのような愚行に加担するつもりは毛頭なかった。
むしろ、ティーテとの幸せな生活の邪魔になると判断し、ヤツを食い止める側に回る。
「おまえにも消えてもらう!」
「そうはいかない!」
せっかく卒業まで半年を切ったんだ。
きちんと学校を出て、ティーテとのんびり領地運営をしたい――その願いを叶えるまでは死ねないね。
「はあああああああああっ!」
ありったけの魔力を開放して襲いかかってくるマルゼ。
まさに死力を尽くした攻撃って感じだが……甘い!
「うおおおおおおおおおっ!」
俺は真正面からその攻撃を受け止める。
これで、力の差をハッキリ分からせようと考えたのだ。
ぶつかり合う聖剣と魔剣。
再び起こった鍔迫り合い――結果は最初と同じだった。
「ぐおあっ!?」
吹き飛ばされるマルゼ。
その手から魔剣が放り出され、天井へと突き刺さる。
あれではもう戦えないだろう。
「勝負あり、だな」
俺はそう告げて、聖剣を下ろす。
さて……ここからは、ヤツにじっくりと話してもらわなくてはならない。
そう思って近づこうとしたら、
「やっぱり……君を放っておくと何かと厄介そうだ」
いつの間にか、背後に《この世界を知る者》が立っていた。
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