第289話 学園長代理

 いよいよ学園祭が翌日に迫る。

 この日、俺たち生徒会&学園騎士団のメンバーは、「とある人々」を学園に迎え入れるために朝から準備をしていた。


 その「とある人々」とは――今年の夏に俺たちが留学で訪れた、サレンシア王国にあるランドルフ学園の生徒会メンバーだ。

アンネッテやマルゼには随分と世話になったし、向こうでの生活はとても楽しくていい思い出になった。彼らにも同じように、いい思い出を残してもらいたくて、ブランシャル王国はアストル学園の学園祭へ参加を呼びかけていたのだ。

 

 これに対し、サレンシア王国側もランドルフ学園の参加を快諾。

 向こうの学園も他国との交流ができると、参加表明してくれた。


 ――と、まあ、ここまでなら互いの学生同士が交流する健全なイベントなのだが、どうにも背後に国際情勢ってヤツが絡んでいる気がしてならない。

 とは言うものの、学生身分の俺たちがそんなことをいちいち気にしたところでどうしようもないのだが……とりあえず、今は余計なことを考えず、彼女たちにアストル学園での生活を満喫してもらうことに全力を注ごう。


 てなわけで、ウォルター先生が「もうじき到着するそうだ」とわざわざ生徒会室まで教えてに来てくれたことをきっかけに、俺たちは正門へと向かった。

 

 到着すると、すでに正門前は学園関係者でごった返していた。よく見ると、王室の関係者も交じっているみたいだな。 


 しばらくすると、たくさんの馬車が学園へと近づいてくるのが見えた。


「どうやら、到着したようだな」


 ウォルター先生が言うには、あの馬車にランドルフ学園の学生たちが乗っているらしい。

 それにしても……


「馬車の数が多くないか?」

「学生だけでなく、学園関係者も乗っているみたいだからな。ほら、テシェイラもおまえたちについていっただろ?」


 確かに……そういえば、あの時、ウォルター先生は学園選抜のメンバーから漏れてしまったため、落胆していたってテシェイラ先生が言っていたな。


 やがて、馬車は正門前で止まると、三人の男性がおりてくる。

 年齢からして職員だろうか。

 もっとも位が高いと思われるチョビ髭の男性が前に出ると、それを迎えるようにこちらからも白髭を蓄えた年配の職員が手を差し出し、固い握手を交わす。

 ――って、あの人誰だ?


「ウォルター先生、あの人は……?」

「グランダン・オズモンド――学園長代理だよ」

「学園長代理……」


 その話は、シャニアさんから聞いていた。

 未だ療養中であるアビゲイル学園長に代わって、かれこれ四十年以上の長い間、この学園の発展に貢献してきた古株らしい。

ちなみに、あの若いアビゲイル学園長をその座に押し上げたのは、オズモンド代理自身であるとのことだ。つまり、現学園長にとって、彼ほど信頼できる人物は他にいないという判断を下し、代理を依頼したのだろう。


ただでさえ、学園長の体調不良を招いたのは学園関係者である説が濃厚になっているのだ。下手な人選はできないからな。


 それからすぐに、後ろの馬車から続々と人がおりてくる。その中に、


「お久しぶりですね」

「お待ちしていましたよ、アンネッテ会長」


 ランドルフ学園生徒会の会長を務める、アンネッテの姿もあった。

 さらに、マルゼをはじめ、生徒会のメンバーが続々と馬車からおりてくる。


 当初の予定通り、俺たちは彼女たちに学園を案内すべく、近づいていった。

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