第285話 脅威
夕焼け色に染まる屋上で、俺とティーテは学園長の専属秘書だというシャニアさんから驚くべき情報を聞かされる。
「学園長の復帰を妨害って……」
穏やかじゃない話題だ。
アビゲイル学園長といえば、学園内の誰からも好かれ、尊敬されている。
それだけじゃない。
魔法研究の第一人者としてその名が知られており、別の大陸の魔法使いたちも注目しているとまで言われているほどだ。
少なくとも、俺はこの学園内でアビゲイル学園長を悪く言っている者に会ったことは一度もない。だから、シャニアさんの言う裏切り者がいるなんて到底思えなかった。
「……その情報は確かなんですか?」
「バレットさんが疑うのも無理はないですね。……言っておいて何ですが、私自身もそれを疑っています」
「えっ?」
ど、どういうことだ?
「じゃ、じゃあ、裏切り者がいると言っているのは……」
「騎士団長です」
ブランシャル王国騎士団のトップ――そういえば、きちんとした形ではまた会ったことがなかったな。
「騎士団長はなぜそのようなことを?」
「どうやら、騎士団は先日の地下図書館に絡む事件で情報を外に漏洩した者がいると睨んでいるようです」
「情報漏洩って……あれは事前に学園の内部事情に詳しい元貴族のレクルスト家とハルマン家の当主が絡んでいるから発覚したのでは?」
「ですが、襲撃するためのタイミングや自分の娘を人質にするやり口など、それを指示した者がいるというのが取り調べで判明したのです」
「なっ!?」
つまり、あの事件には別に黒幕がいたのか。
そいつの真の狙いは――アビゲイル学園長だった。
「そんな……アビゲイル学園長が……」
これにはティーテもショックを隠し切れなかった。
ティーテもまた、学園長を心から尊敬しているうちのひとりだ。
しかし、その人物が苦境に立たされている――彼女としてもこのまま黙っているわけにはいかなかったようだ。
「……バレット、探しだしましょう」
力強い瞳で俺を見つめながら、ティーテはそう告げた。
……生徒会長である俺としても、このまま引き下がることはできなかった。
それに、まもなく学園祭も始まる。
今年は隣国も巻き込み、例年にない規模の学園祭となるため、そうした不穏分子はただちに除去しておかなければならない。下手をすれば国際問題に発展しかねないからな。
「シャニアさん、俺たちはこれからどうすれば?」
「詳細な情報に関しては追って連絡いたします。それまで、この件を他の生徒会のメンバーに知らせて――あなたたちにできることをしなさい。あと、今さら忠告する必要もないと思いますが、念のために言っておきます」
「この件は他言無用――ですよね?」
「その通りです」
先読みしてそう言うと、シャニアさんはフッと小さく笑う。
シャニアさんが立ち去った後、俺とティーテは屋上に設置してある木製のベンチへ腰を下ろした。
「大変なことになってきたな……」
「ほ、本当ですね」
やれやれ……三年生になってから、本当に慌ただしくなってきたな。もしかしたら、本編と何か関係があるんじゃないか?
その辺りも含めて、一度じっくりと学園を調べてみるとするか。
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