第282話 ラウル、復活
事件は解決した。
――いや、新たに浮上した問題とかあるから、完全に解決したかと言われたら疑問が残ってしまう……しかし、当初の目的であったジャーヴィスとマデリーンの救出はこれ以上ない結果となったのだから喜ばしいことだ。
俺たちは拘束されたマーデン他多数の悪党たちをあとから合流した騎士団へと引き渡す。
……さて、心配事その一であるラウルの状態だが、
「お騒がせして申し訳ありません……」
現在はすっかり元通りとなっていた。
しかし、あの時の戦闘では完全に我を忘れていたからなぁ……たまたま、近くに明確な敵意を向けていたマーデンがいたから、矛先がそちらに向けられていたものの、一歩間違っていたら俺たちに襲いかかっていたかもしれない。そうなっていると、このような結末は迎えられなかっただろう。
ラウルもそのことを重々承知しているため、意気消沈していた。
「学園騎士団の戦力として貢献しなければならないのに……大きく足を引っ張ってしまうなんて……」
原作を見ていても分かるが、ラウルは責任感が強い。
なんでもかんでもひとりで背負い込もうとする。
そういえば、原作前半でもそのような素振りが見られる。たとえば、学園で原作版バレットから執拗な嫌がらせを受けるが、それは魔剣を授かった自分のせいとして負のスパイラルに陥った。
原作では、ここからティーテが合流し、互いに励まし合いながら絆を深めていくのだが、さすがにこっちではそうもいかない。
――けど、その代わりに、
「そんなに落ち込まないで、ラウル」
「そうだそうだ。しょげているなんておまえらしくないぞ」
「本来のあなたが真面目で優しい性格をしているとみんな分かっているんだから」
ユーリカ、アンドレイ、クライネが励ましの声をかける。
そう。
原作でのラウルは、当初友人と呼べる存在がティーテのみだった。しかし、こちらでは生徒会に所属し、また、クラスのみんなもラウルのことを認めているため、決してひとりなんかではない。
「ラウル……君は生徒会にも学園騎士団にも――何より、俺にとっては大切な友人で欠かせない存在だ。これからも力を貸してほしい」
「バ、バレット様……」
これでいい。
原作では話が進むうちに「ラウル闇落ち説」なる考察も目に入ったが、この世界に限って闇落ちなんてことはないと思う。俺たち仲間がしっかりとフォローしていけばいいのだ。
とりあえず、ラウルの方は問題だろう。
むしろ、問題があるのはもうひとつの方だ。
「アビゲイル学園長……大丈夫でしょうか」
「心配だね……」
元気を取り戻したラウルの様子を嬉しそうに眺めていたティーテとジャーヴィスだが、俺と同じようにもうひとつの問題点について危機感を持ったようだ。
アビゲイル学園長の不調。
これが一時的なものであればまだ救いはあるのだが……とにかく、今はただ無事を祈るばかりだ。
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