第280話 立ち上がれ、バレット
「アンドレイ! 学園長!」
圧倒的優位な状態で戦っていたはずが、なぜかふたりはその場に倒れていた。
恐らく、アンドレイの方は力を取り戻したゴーレムの反撃を食らったせいだろう。
しかし、学園長は――よく見ると、顔が青ざめており、呼吸も荒い。どう見ても体調面から来るダウンだった。
「バレット! 加勢するぞ!」
「私も力を貸します!」
自由の身となったジャーヴィスとマデリーンは剣を手にしてこちらへ合流。
って、どこでそんな剣を手に入れたんだ?
疑問に思っていると、ふたりの父親とその取り巻きの男たちが気絶しているのを発見。俺たちが戦っている間に素手で彼らを倒し、武器を奪ったのか。さすがに場数を踏んでいるだけはあるな。
「雑魚がどれだけ集まっても意味はないんだよ!」
マーデンめ……もう勝った気でいるな?
確かにこの状況は圧倒的不利。
――けど、覆せないわけじゃない。
「む? おまえも魔剣使いか?」
ここでようやく、マーデンは俺の剣が普通の物ではないことに気づく。ラウル同様、魔力を込めることで力を増すこの剣だが……魔剣とはちょっと違う。
「俺のは魔剣じゃない。――聖剣だ」
「っ!? 聖剣使いだと!?」
そのひと言で、マーデンの警戒心は強まる――が、ちょっと遅かったな。
「はあああああああっ!」
俺は聖剣に魔力によって生みだされた水をまとわせる。
「!? さっきの水は聖剣の……」
「そういうこと――だっ!」
マーデンの言葉に応えつつ、俺はゴーレムの右腕を斬り落とした。
ここまではさっきまでと似た流れ――が、アンドレイはここからやられたのだ。その原因はすぐに分かった。
「無駄だ!」
ゴーレムを操るマーデンは、斬り落とされた右腕に魔力を送る。すると、あっという間に斬り落とされた右腕が元通りとなった。
「なっ!?」
まさかこれほど早く復活してくるとは……だが、これで最初に倒すべきなのが誰なのかハッキリしたな。
「マデリーン! 僕たちであの魔法使いを捕らえるぞ!」
「分かりました、ジャーヴィス先輩!」
こちらの意図を読み取ったのかと思うくらいのタイミングで、ジャーヴィスとマデリーンのふたりがゴーレムを操るマーデンのもとへ急ぐ。
「小賢しいマネを!」
先ほどまで人質だったふたりに、今度は狙われる立場となったマーデン。
そちらに注意が向けられれば、こっちとしても戦いやすくなる。
「そういえば……テシェイラ先生が授業で言っていたな」
ふと、俺はゴーレムの特性について思い出す。
テシェイラ先生の授業でやっていた内容だけど……確か、ゴーレムには魔道具が埋め込まれていて、それがいわば心臓の役割を果たしているという。つまり、そいつを破壊しない限り、ゴーレムは何度でもよみがえるのだ。
「……やってやる!」
俺はゴーレムの心臓――コアを破壊するため再び聖剣を構えた。
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