第274話 遭遇
「驚いたぜ……俺たちが当たり前のように生活してきた学園の地下に、こんなものが眠っていたなんてな」
アンドレイが驚くのも無理はない。
俺だって……このような存在は【最弱聖剣士の成り上がり】にはなかったから、めちゃくちゃ驚いたよ。
呆然と見つめる俺たちに、学園長が声をかける。
「先ほどのアンドレイの言葉だが……少し誤りがあるな」
「誤り、ですか?」
「そうだ。ここは眠っているのではない――今も目覚めているのだ」
神殿が……目覚めている?
「ど、どういうことなんですか?」
ラウルが尋ねると、学園長は神妙な面持ちを崩さないまま続けた。
「この神殿の内部には、強大な魔力を秘めた魔道具が存在していた。長年、動かすことさえ叶わなかった代物だが――近年の研究により、それが可能となったのだ」
「なるほど。場所が転移するってそういうことだったんですね」
今まではここから動かすことができなかったから、研究に制限があった。しかし、その制限がなくなり、きちんとした施設での研究が可能となった――と、いうわけか。
黒幕はその魔道具を狙っているのが濃厚だが……だとしたら、どうしてマデリーンとジャーヴィスを連れ去ったんだ?
まだまだその動きには謎が多い。
周囲の状況だけで相手の行動を決めつけず、警戒を怠らないようにしなければ。
「魔道具が新しい研究施設へ持ち込んだのは一週間前……そのことを知っている者は、本当にごくわずかしかいない」
「なら、ヤツらがここに入ったとしても……」
「お目当てと思われる魔道具は存在していないだろうから、きっと混乱しているはずだ」
「だったら急ぎましょう! それが分かった瞬間、マデリーンやジャーヴィスがどうなってしまうか……」
「そうだな。先を急ぐとしよう」
少数精鋭となり、不安要素はあるものの……このまま回れ右をして帰るわけにはいかない。
腹をくくった俺たちは、神殿へと足を踏み入れる。
神殿内は不気味な静寂に包まれていた。
しかし……異様な気配を感じる。
「何か……いますね」
ラウルの呟きに、俺は黙って頷いた。
声や行動に出さないだけで、アビゲイル学園長やアンドレイも同じことを思っているに違いない。それほどまでに、俺たちの全身を覆うように立ち込める空気は異常としか言いようがなかった。
「なんだか……気味が悪いぜ」
しばらくは黙っていたアンドレイだが、たまらずそんな声を漏らす。
神殿の奥に行けば行くほど、その気持ちは強まっていった。
本当に……何なんだ、ここは。
さらに前進すると、
「――――」
突然、声がした。
明らかに怒りのこもった声――怒鳴り声だ。
「学園長」
「あぁ……どうやら、ようやくお目当ての人物たちにぶつかったようだ」
俺たちはこれまで以上に息を潜めて前進。
そして――ついに黒幕と遭遇した。
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