第273話 追いかけた先に見つけた物

 アビゲイル学園長の様子が急変した。

 そのきっかけは、俺がマデリーンたちの魔力の位置を口にした時――それを思い返したら、大体のことが察せられた。


「もしかして……さっき言っていた、例のアレというのが、今マデリーンたちがいる場所にあるんですね?」

「その通りだ。――が、そこへは到達できないように腕の立つ者たちで固め、防衛を強化しているはずなんだ」


 やはりそうか。

 黒幕はこの学園の秘密を隅々まで知り尽くしている。

 情報源はどこなのか、その詳細は一切不明だが……学園長が守ろうとしていた場所へ的確に進んでいることから、事情を完璧に把握しているものと思われる。


「行きましょう、学園長!」

「……そうだな。みんな、ここから先は一瞬たりとも油断するな。どこから何が襲ってくるか分からないからな」

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 本来なら、俺たち学生がこの場に足を踏み入れることはない。

 だが、今は緊急事態だ。

 それも、俺たちの仲間であるジャーヴィスとマデリーンの危機と来ている。そうなれば、たとえ学園長が止めたとしても、俺たちは押し通っただろう。


 まあ、ともかく、今はグダグダ言っている暇はない。

 一刻も早く現場へたどり着くため、俺たちは全力疾走で目的地を目指して駆けだした。



 例のアレがある場所までは、かなり距離があった。

 だが、一秒でも早くその場へ着こうと、俺たちは休むことなく走り続ける。

 そして、まもなく到着というところで――異変が起きた。


「っ!? あれは!?」


 眼前に広がる光景に、思わず息を呑む。

 そこには、先ほど学園長が言っていた、この学園の地下ダンジョンを防衛する目的で配置されていた腕自慢たちが倒れていた。


「だ、大丈夫か!?」


 慌てて学園長が駆け寄る。

 幸い、死者は出ていないようだが、中にはかなりの重傷者もいるようだ。現状では息があっても、長らく放置しておくとどうなるか分からない。


 そこで、回復魔法を得意とするティーテとクライネ、そしてユーリカがその場に残って介抱することとなった。

 正直、ティーテを残して行くことには抵抗があったが、


「バレット……ジャーヴィスとマデリーンを助けてあげてください」


 潤んだ瞳でそうお願いされると、揺らいでいた俺の心がピタッとおさまった。


「行ってくるよ、ティーテ。必ずふたりを連れ戻す。そうしたら――今度こそ、学園祭へ向けた会議をしなくちゃな」

「はい!」


 こうして、俺たちはティーテの笑顔に見送られ、さらにダンジョンの奥へと進んで行くのだった。



 最終的に残ったメンバーは俺とアビゲイル学園長、そしてラウルにアンドレイという戦闘特化のメンツだった。

 あれだけの数の精鋭を蹴散らしている以上、この四人では正直どこまでやれるかまったく分からない。

 それでも、ただ助けを待っているなんてことはできなかった。

 正体不明の黒幕を追い求めて、進んで行く――やがてこれまでよりも天井の高い、開けた空間へと出た。


 その視線の先に――俺たちはある物を発見する。


「あれが……」

「凄い……」

「こんな物が学園に地下にあったとは……」


 俺とラウルとアンドレイは思わずその場に立ち尽くす。

 目の前には現れたのは……遥か古代につくられたと思われる神殿だった。


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