第268話 生還
マデリーンが残した魔力を追って書庫までたどり着いた俺たちだが――それはどうもマデリーンをさらった者による罠だったようだ。
俺たちはマデリーンを見つけだすどころか、逆に今度はジャーヴィスを見失ってしまう。
あの妙な霧の影響でちょっとしたパニックに陥っている隙に、犯人は誰にも気づかれることなくジャーヴィスをさらっていったのだ。
さらに、そのような手口を披露しておきながら、テシェイラ先生をはじめとする学園関係者がその存在にまったく気づかなかったこともおかしい。
この学園は、魔法研究棟も併設している。
そこには魔法学に関して優秀な人材が揃っていた。
そんな彼らが気づくことさえできないなんて……相手はかなりの使い手であることが予想された。
書庫から救出された俺たちは、すぐさま学園の医務室へと運ばれた。
回復魔法の専門家である先生にチェックしてもらったところ、どうやらあの霧には毒の成分が含まれているらしく、その影響で身体能力と思考力が一時的に低下しているのだろうと診断される。
特に、最後の力を振り絞って扉をこじ開けた俺とラウルは重症だった。
――とはいえ、単に魔力切れスレスレまで酷使したため、ほとんど体が動かないといった意外にはこれといって問題はない。まあ、ちょっと気持ち悪いくらいだ。
「大丈夫ですか、バレット」
ベッドで横になる俺の顔を不安げな表情で覗き込むティーテ。そのふたつの綺麗な瞳は涙でウルウルと濡れており、今にも雫がこぼれ落ちてきそうだ。
ちなみに、隣にあるラウルのベッドでユーリカがまったく同じ行動を取っていた。
俺とラウル以外の生徒会メンバーはすっかり回復したようで、アンドレイやクライネも普通に動けるまで回復していた。
その後、しばらく診療所で待機しているとアビゲイル学園長がやってくる。
「体の調子はどうだい?」
「またちょっと動けそうにないですね……」
「僕もです」
学園長が真っ先に声をかけたのは俺とラウルだった。
他のみんなはすでにベッドが起き上がっているが、魔力を使い果たしている俺とラウルはそう簡単に回復しないため、解くに目についたのだろう。
「それにしても、まさかマデリーンぃ続いてジャーヴィスまで行方不明になるとは」
「!? そうだ! ふたりはどうなったんですか!?」
俺は思わず飛び起きようとしたが、体が言うことを聞かず声だけを張り上げる。
「落ち着け。今、職員を総動員して捜索を続けているし、騎士団に応援を要請した。学園の外へ出た形跡はないことから、恐らくまだこの中にいるだろう」
「……もしかしたら、地下図書館かもしれません」
「何っ?」
俺がその話をすると、アビゲイル学園長の表情が一変する。
なんだか、動揺しているように映った。
「学生たちの間で囁かれている怪談話の類――というわけではなさそうですね」
俺の声に、他のメンバーも反応を示す。
さらに、今回の件の発端がその学園地下図書館にあるということを知った学園長は、ひとつ大きなため息をついてから口を開いた。
「あなたたちなら、大丈夫かしらね」
そして、とうとう学園長は学園地下図書館について語り始めた。
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