第264話 謎が深まる学園書庫

 マデリーンを捜して、俺たちは学園図書館の書庫へとやってきた。

 ――ただ、人探しをこの書庫というのが非常に厄介な場所だった。


 できれば、何もない時にじっくりと見て回りたい……そう思わせるほど、アストル学園の書庫は幻想的な雰囲気で満たされていた。


「…………」


 一緒に行動しているティーテも、マデリーンを捜さなくてはいけないという使命を感じつつ、気づけば辺りに目がいっているという状態だ。

 ……まあ、それはティーテに限ったことじゃない。

 他のみんなも、書庫の雰囲気に呑まれている節があった。


 で、肝心のマデリーンの捜索についてだが、


「まいったな……手がかりすらつかめないぞ……」


 めちゃくちゃ広大な空間ということもあるのだろうが、それを抜きにしても最近人が訪れた形跡がなかった。


「いくら広いとはいえ、何も手がかりがないなんて……どういうことだ……」


 ジャーヴィスも不審に感じているようだ。

 

「同感だ。……こうなってくると、テシェイラ先生に期待したいところだけど――あれ?」


 そこで、俺は気がついた。

 生徒会のメンツは一度揃っているため、全員いる。

 だが、テシェイラ先生の姿がなかったのだ。

 ……妙だな。


「テシェイラ先生がいないみたいだけど……」

「えっ!?」


 ティーテが真っ先に反応し、そのあとでみんなが周囲を見回す。だが、どこにもテシェイラ先生の姿はなかった。


「おいおい……テシェイラ先生までいなくなっちまったのかよ」

「落ち着け、アンドレイ。これだけの広さだ。どこかで迷っているのかも」

「その可能性もあるんだろうけど……あのテシェイラ先生が迷う姿なんて想像できないわね」


 クライネの言う通り、ジャーヴィスの言う「テシェイラ先生迷子説」は絶対にないとは言えないが、限りなくゼロに近いだろう。


「ね、ねぇ、ラウル……今の状況ってかなりヤバいように感じるんだけど……」

「僕もそう思うよ」


 ラウルの手が、自然と魔剣へと伸びる。

 その気持ちはよく分かる。

 気がつけば、俺の手も聖剣に触れていたのだ。

ハッキリと姿を見せたわけではないのだが……肌にまとわりつくような違和感があった。テシェイラ先生だけが姿を消したことと、何か関係があるのだろうか。


「ともかく、今ここにいるメンバーが散り散りとならないよう、ここからはみんな一緒に行動しよう」

「それがいいですね。――だったら」


 俺の提案に賛成した直後、ティーテがギュッと手を握ってくる。


「これならバレットを見失いませんよ!」

「あ、ああ、そうだな」



 まさかの行動に、俺は思わず固まってしまう。

 ティーテ……随分と大胆になったなぁ。


「やれやれ、彼女はたまに物凄く積極的になるね」

「はっはっはっ! まったくだぜ!」

「わ、私たちも手をつなごうか、ラウル」

「そうしようか、ユーリカ」

「ちょっと。こっちにもバカップルがいるわよ」


 ま、まあ、とりあえずみんなで固まって行動することにしよう。

 ――この書庫には、まだ何か秘密がありそうだし。

 それが、マデリーン失踪と何かつながりがあるかもしれない。

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