第262話 手がかり
マデリーンの魔力が残された、学園の歴史が記された書物。
これは彼女からのメッセージなのだろうか。
その謎を解明しようとするが、
「うーん……」
頭を悩ませるばかりで、なかなかいいアイディアは浮かんでこない。まあ、ただの思い過ごしってケースもあるからあまり悩んでも仕方ないかも――っと、
「うん? ちょっと、ここを見てくれ」
異変を察知したのはジャーヴィスだった。
曰く、この本にあるマデリーンの魔力だが、ある一部のページにのみより強く残されていることに気づいたという。そのページとは、
「学園の地下避難経路、か……」
アストル学園には火災などの非常事態が発生した際、学生たちを速やかに避難させるため、廊下以外にもいくつか避難経路が存在していた。それらは普段、学生たちの生活の邪魔にならないよう、認識阻害魔法がかけられているというが、このページではその非常用経路の中でも地下へとつながる位置が記してあった。
「ち、地下って……じゃあ、やっぱり!」
興奮しだすドロシー。
……確かに、これだけ揃えば、マデリーンが地下図書館へと向かったと読めるかもしれない――が、どうにも腑に落ちない点がいくつかある。
まず、
「納得いっていない顔ですね、バレット」
そう言って、俺の顔を覗き込んだのはティーテだった。
本当に、彼女は俺のことをなんでもお見通しだな。
「……なぜ、このような回りくどい方法を取ったんだと思ってね」
「やはり、君もそう感じていたか」
「どういうことだ?」
ジャーヴィスは思うところあったようだが、その一方でアンドレイは俺の言葉に対してまったくピンと来ていない様子だった。俺としても自分の考えを整理しておきたかったので、そのついでにアンドレイへと説明をする。
「マデリーンの性格からすると、このような気づきにくい方法を取るより、もっと一発で俺たち――いや、俺たちだけじゃなく、周りにも分かるようにすると思うんだ」
「なるほど! 言われてみれば、マデリーンのやることにしては随分と地味だな!」
「或いは……そうせざるを得ない状況だった、という線もあるな」
「そ、それって――」
ティーテはそこで言葉を止めるが、ジャーヴィスには何を言おうとしているのかきちんと伝わったらしく、静かに頷くことで返答する。
「これは……何か裏があるな」
テシェイラ先生の顔からは余裕がなくなり、少し険しくなった。
「でも、それならどうしてこの本にマデリーンの魔力が……」
「自分の意思に関係なく、魔力を残さなくてはならない状況といえば――誰かに脅されてやった、とか?」
何気なく口にしたアンドレイの言葉に、全員の体がビクッと強張る。
「やっぱり……そう考えるのが妥当かな」
「お、おいおい、本気かよ」
「自分がそう言ったんじゃないか、アンドレイ」
「そ、それはそうだけどよぉ……」
「とにかく、すべてはこの魔力を追った先にあるはず――行こう」
マデリーンが残した手がかりをもとに、俺たちは彼女がたどった道を進む。
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