第261話 学園七不思議

「さあ! みんなで学園七不思議の謎を解明しつつ、マデリーンを捜すわよ!」


 意外とノリノリなテシェイラ先生。

思わず本音がのぞき見えている――って、ちょっと待て。


「学園七不思議ってなんですか?」

「あら? それも知らなかったの?」


 キョトンとした表情で尋ねてくるテシェイラ先生。ティーテたちも口にこそ出してはいないが、その表情から、先生と同じ反応なのだろうなと察することができた。


「ま、まあ、バレットはこういうのに興味なさそうだったしな」

「確かに……以前の君ならば、絶対に乗ってこない話題だよ」


 アンドレイとジャーヴィスはウンウンと頷きながら言い、その横ではティーテが「あはは」と苦笑い。

 ……反論できないな。

 原作版バレットならば、きっと「つまらん」のひと言で一蹴だろう。ヤツが興味のあることと言えば、女子か儲け話くらいだからな。他者とのかかわりのすべては、自分にプラスとなることにしか反応しない――それが、原作版のバレット・アルバースである。


 だから、学生たちの間でまことしやかに囁かれている学園のオカルト話を知らなくても当然なのだ。


 ――しかし、その手の話題はこちらの世界でもあるんだな。

 それと、学園七不思議というからには、あと六つの謎があるはず。そちらも地味に気になるな……今度ティーテに聞いてみよう。



 学園七不思議の話題でひとしきり盛り上がると、いよいよ本格的に捜索を開始――と、いきたいところだが、正直言って、手がかりは何ひとつない。

 スタートから完全に躓いた俺たちだったが、ここでティーテからある提案が。


「サレンシア王国でマリナさんが誘拐された際に、バレットは彼女が監禁されている場所を見つけましたよね」

「あ、ああ――そうか!」


 さすがはティーテだ!

 可愛くて天使なだけじゃなく、頭も冴える!

 さすが俺の嫁!


 サレンシア王国でマリナが誘拐された時、彼女は機転を利かせて髪留めに魔力を残すことで俺たちに居場所を伝えた。その話は、当然マデリーンも知っているはず。だから、もし誘拐の類だとすると、マデリーンの魔力はこの図書館のどこかに残っているかもしれない。


「とりあえず、まずはマデリーンが何かを残していないか、それを手分けして探そう」


 俺はみんなにそう提案すると、それぞれ散ってマデリーンの痕跡を探し始める。

 もちろん、マデリーンが確実に自分の魔力をここへ残しているとは限らない。だが、軽く見えて読みが鋭く、先を見据えた行動の取れる彼女ならば、俺たちへ向けたメッセージを残している可能性は高いと思われた。


 ――そうした俺の狙いは、見事に的中することとなる。


「バレット」


 場所が図書館ということで、何かを発見しても大声を出すことなく、俺の肩をチョンチョンと指で突くティーテ。彼女が手にしていたのは、


「本……? あっ」


 ティーテが持ってきた一冊の本には、マデリーンの魔力が残されていた。

 やはり、何かメッセージを残していったのだ。

 俺はみんなを集め、図書館にある大きめの机の上に本を置く。

 それは、学園の歴史を記した本だった。


 もしかしたら……マデリーンは居場所と同時に何かを伝えるため、この本を選んだのではないだろうか。

 そんな予感がしたのだ。

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