第260話 マデリーンはどこへ?

 と、いうわけで、俺とティーテ、それにジャーヴィスとアンドレイの四人はドロシーとともに学園図書館へと入る。


 ――そこは、いつもとなんら変わらないのどかで平和な時間がゆったりと流れている空間であった。


「相変わらず平和だなぁ、ここは」


 一見すると、何かトラブルがあったようには到底思えない。ましてや、学生たちの間でまことしやかに囁かれている、地下図書館が絡んでいるなんて……まったく信じられないな。


 とりあえず、マデリーンが消えた場所へ案内してもらったが、


「手がかりはなし、か」


 一応、その周辺を調べてみたのだが……目立って怪しい場所は確認できず。


「でも、ここでマデリーンが消えたんですよね?」

「は、はい……」


ティーテの言葉に、ドロシーは力なくそう呟いた。

ドロシーの話ではここで会話をしている途中で急に消えたという。その時の話題が地下図書館のことだったらしく、もしかしたらと、思ったらしい。


「って、それだけの情報じゃ特定はできないな」


 ジャーヴィスの言う通り、たまたまその話をしていただけなんじゃないかって気がする――ただ、マデリーンが行方不明になっていることは確かだ。


 とりあえず、図書館に限らず、もう少し捜索範囲を広げようと提案しかけた、その時だった。


「あら? こんなところで何をしているの?」


 俺たちに声をかけてきたのは――テシェイラ先生だった。


「テシェイラ先生? あっ」


 その時、ふとある考えが浮かぶ。


「あの、少しお聞きしたいことがあるんですが」

「聞きたいこと?」

「地下図書館についてです」

「「「「!?」」」」


 俺は回り道をせず、直球でテシェイラ先生に尋ねる。これにはさすがにみんな驚いたみたいだな。

 一方、俺からの質問を受けたテシェイラ先生は、


「ははは、意外だね。君があのような噂を信じるタチだったとは」


 テシェイラ先生に動揺するような素振りは一切見られなかった。……いや、もしかしたら俺たち以外からも、学生からこうした質問を何度も受けており、対処法を把握しているのかもしれない。


「では、地下図書館は存在しない、と?」

「ここに勤めて五年くらいになるが……少なくとも、私はそのような場所が学園内にあるなんて聞いたことがないかな」


 受け答えもしっかりしているし、嘘をついているようには見えない。

 じゃあ、やっぱり地下図書館は存在していないってわけか。


「おいおい、だったらマデリーンはどこにいるんだ?」


 アンドレイの言う通り、こうなってくるとマデリーンの行方がますます分からなくなってくるな。

 だが、今の話を聞いたテシェイラ先生が、


「マデリーンの行方が分からないのか?」


 と、興味深げに尋ねてきた。

 

「え、えぇ、学園祭の件について、これから会議を開くはずだったんですが、マデリーンだけ姿を見せていなくて……」

「なるほど……」


 テシェイラ先生の瞳がキラキラと輝き始めた。

 もしかして……テシェイラ先生も地下図書館の噂を信じているクチか? これをきっかけに見つけてやろうと考えているのかもしれない。


 ただ、俺たちからすれば強い味方だ。

 なんとかして、テシェイラ先生の協力を得られるようにしたい。


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