第259話 地下図書館
「学園地下図書館って……」
みんなの反応についていけず、顔を引きつらせていると、
「なんだ、知らないのかい?」
ジャーヴィスが「マジか」みたいな顔で俺を見る。どうやら、アストル学園に通う者にとって、その話は常識のようだった。
――って、言ってもなぁ。
共有された記憶には、そんな情報なかったし。かれこれ一年以上この学園に在籍しているが、地下図書館なんてワードは聞いたことがない。
「確かに、バレットはその手の話に関心がなさそうだものね」
ため息交じりにそう言ったクライネだったが、すぐにその地下図書館とやらの説明をしてくれた。昔の俺がトラウマになっているだけで、根は優しい子なんだよなぁ。
「単なる噂よ。ほら、うちにはテシェイラ先生のように、著名な魔法研究が多いでしょ? その人たちが研究に使うための資料として、たくさんの魔導書が封印されている部屋が学園の地下にあるって話なの」
「な、なるほど……」
それだけ聞くと、別に荒唐無稽なホラ話ってわけじゃなさそうだ。
魔導書の中にはページを開くだけでも命懸けって危険な代物もあると聞く。或いは、読み進めているうちに発狂していくものも――そう言った、特殊な呪いだとか魔力によるトラップが込められた魔導書を解読するには、読む側にも相応の実力が伴っていないと不可能だ。
テシェイラ先生のような、実力も兼ね備えた人物のように。
「……地下図書館がどういったものなのか、大体の事情は分かったけど――なんでマデリーンがそこへ?」
根本的な疑問はそこだった。
地下図書館と呼ばれる噂が学生の間で広まっているというのはついさっき知ったけど、なぜそこにマデリーンが足を踏み込んだのか。そして、なぜ噂止まりはずの地下図書館を見つけることができたのか。……そもそも、本当に地下図書館を見つけたのか?
いずれにせよ、現状では謎が多すぎる。
「……仕方がない」
俺はゆっくりと腰を上げた。
同時に、こちらの行動の意図を悟ったのか、俺以外の全員も腰を上げる。
「ドロシー」
「は、はい!」
「案内してくれるか? ――マデリーンが消えた場所へ」
生徒会の面々は、ドロシーの案内でマデリーンが消えたという場所まで移動した。
そこはやはりというべきか、
「図書館、か」
校舎のすぐ隣に建てられた四階建ての図書館。
今も普通に学生が利用しているそこは、はたから見ていると普段となんら変わらない姿であった。ますます、マデリーンが消えたって情報が信じられないな。
「それで、マデリーンはここのどこで消えたんだ?」
「い、一階の水魔法に関する書物がある場所で……」
「よし」
ここで、俺はメンバーを二手に分けることにした。
俺とティーテ、アンドレイにジャーヴィスの四人はこのまま図書館へ入る。それと、もしかしたらドロシーの勘違いですでに別の場所へ移動しているかもしれないので、残ったラウル、ユーリカ、クライネは校舎内を調べてもらう。
「それじゃあ、頼んだぞ」
「はい!」
俺は校舎捜索隊のリーダーに指名したラウルへそう告げて、その場から離れる。
果たして、マデリーンは今どこにいるのだろうか。
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