第257話 決意の夜
学園生徒会主催のキャンプは大きな盛り上がりを見せた。
ランドルフ学園への短期留学中は、最終日にゴタゴタがあったけど、想定していたよりもリラックスして過ごせていた――それでも、やはり心身ともに疲労はたまっており、今日のこのキャンプはいい息抜きとなったようだ。
ちなみに、キャンプというからにはテントで寝泊まりをすることになる。
「男子組はこっちだな」
「僕、テントで寝るのは初めてなんですよ」
「そうなのか? クラウスさんとの旅とか、ずっと宿屋に?」
「いえ、テントなしの野宿です」
「…………」
ま、まあ、それも修行の一環――なのかな?
あの人の性格を考えると、そういうことやりそうだもんなぁ。
一方、女子組は、
「私、こういう形でみんなと一緒に寝泊まりするのは初めてです!」
「私もです」
ティーテとメリアは楽しそうに話をしていた。その横では、
「私も初めてだけど……本当に大丈夫かしら」
「周りには頼もしい護衛の兵士たちが目を光らせているんですから、問題ないですよ。そもそも、誰が襲ってきてもバレット先輩やラウル先輩がいれば返り討ちにしますし――それよりもっと深刻な問題が」
「な、何よ」
「クライネ先輩……屋外で気分が盛り上がってきたからといってメリア先輩とおっぱじめないでくださいよ?」
「っ!? み、みんながいる場所でするわけないでしょ!」
「それだとみんながいない場所ならやっているって捉えられますが?」
「!?!?!?」
顔を真っ赤にしたクライネが、何やらマデリーンに抗議をしている。
まあ……クライネとメリアが付き合っているというのは公然の事実というか、以前自爆して自ら暴露したというのに、本人は未だに周囲へはバレていないと思っている――というより、分かっていながら頑なに認めないと言った方が正しいか。
それはさておき、夜も更けてくるとお目当てのものも見えてくる。
「わあっ! 凄い星空!」
ティーテが両手を上げて叫ぶ。
まるで空に浮かぶ星を掴もうとしているようだ。
無邪気な笑顔で飛び跳ねるその姿は……一部の隙もなく可愛い。
「バレット」
「うおっ!?」
「そ、そんなに驚かなくても……」
「あ、ああ、すまん」
視線と意識が完全にティーテへと向けられていたため、ジャーヴィスが近づいていることに気づかず、声をかけられると思わず間の抜けた声が出てしまった。
「な、何かようだったか?」
「いや、その……もうちょっとで夏休みも終わるなぁと思って」
「! そうだな……」
思えば、本当にいろいろあった夏休みだった。
でも、これで終わりじゃない。
休みが明けたら、今度は学園祭に向けていろいろと準備をしなければならない。今回の学園祭は例年と違い、サレンシア王国で世話になったランドルフ学園の学生たちを招くことになっている。
何もかもが初めての取り組みになるため、きっと混乱もあるだろう。
でも、このメンバーならきっとどんな困難でも乗り越えられるはず。
今日はそれを確信できる夜となった。
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