第256話 みんなでキャンプ

 夏休みの締めくくりとなるビッグイベント。

 それは生徒会メンバーで行うキャンプだ。


 辺りが暗くなってくる頃にはキャンプファイヤーの準備が整った。

 ちなみに、最初は遠巻きから監視していたメイド勢プラス護衛の騎士たちであったが、いつの間にか普通にキャンプへ参加している。最初はティーテが呼びかけたが、さすがに仕事がと断れた――が、結局押し切られる形で一緒に準備を行っていた。


「ティーテって、普段はおとなしいけどたまに凄く押しが強いよなぁ」

「それは昔からだよ」

「そうなのか?」

「少なくとも、僕らが学園に入学した頃にはあんな感じだったよ」

「へぇ……」


 原作版バレットの記憶を共有している俺だが、その中にいるティーテは大人しくてどこか儚げな雰囲気を持った子だった。俺と初めて会った時、怯えていたティーテへ好きな花の話を持ちかけてから、少しずつ心を開いていってくれたんだけど……もしかしたら、それ以前にバレットの知らないところで心が強くなる出来事があったのかもしれないな。


 やがて、日が暮れると食事の準備に取りかかる。

 最初は料理が得意なユーリカを中心でやろうとしていたが、いつの間にかうちのマリナ、プリーム、レベッカの三人も加わっていた。


「見てください、バレット。星があんなに綺麗に!」

「ホントだ」

「ここからは標高が高いからね。空気が澄んで星がよく見えるんだろう」


 俺とティーテとジャーヴィスは星空を眺めて楽しんでいた。


「うおっ!? でかい肉だなぁ! うまそうだ!」

「これは師匠と一緒に修行の旅をしている時に倒した牛の肉だよ」

「……牛の割には大きすぎませんか?」

「確かに、ちょっと変わった牛だったよ。角が四本あったし、何より体が大きい。たぶん、四メートルくらいあったんじゃないかな」

「どうしたらそんなバケモノを倒せるのよ……」

「さ、さすがは魔剣使いだね」

 

 アンドレイ、ラウル、マデリーン、クライネ、メリアの四人は本日のメインディッシュである巨大な肉の塊を話題に盛り上がっている。


「わあっ! ホントに大きなお肉ですね!」

「修行の旅は順調にいったようで何よりだよ」

「今日来ている騎士団の人たちにも、いいアピールができただろう」


 ジャーヴィスがそう言うと、俺はハッとなった。


 そうか。

 もう一年の半分が終わったんだ。

 俺たちが学園にいられるのも、あと半年ほど――卒業したら、それぞれ別の道を歩んでいくことになるのだろうな。


 ラウルとアンドレイ、それにジャーヴィス辺りは騎士団かな。

 マデリーン、クライネ、メリアの三人は進路希望に魔法兵団を選んだらしい。

 ユーリカはこのままティーテの専属メイドになるだろう。


 そして――俺とティーテは卒業と同時に結婚式を挙げる予定になっている。

 原作じゃ絶対になかったよなぁ。


 って、


「……原作?」


 そういえば、原作では卒業と同時に勇者パーティーとして旅立つんだったよな。

 でも……どこへ?


 原作では、その辺が特に明言されていない。

 そもそもスタートはラウルがバレット率いる勇者パーティーから追放された場面から始まるわけだし、その後のクエスト失敗なども何を目的としていたのか、ハッキリとした描写はなかった気がする。


 作者としては、今後の展開もあるから伏せていたのだろうけど……もうちょっと転生した物の身になって構成を組み立ててもらいたいな。――さすがにそこまで求めるのは酷か。


「バレット! 私たちも行きましょう!」

「あ、ああ」


 とりあえず、今は今日のキャンプを存分に楽しむとしよう。

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